みなさん、こんにちは。経営相談室の高松です。
起業相談で意外と多いのが手続関係の相談。その中でも、「起業したら、健康保険はどうなるのか」というご相談をよくいただきます。病院で診察を受けたときに、自己負担が軽減される健康保険はありがたいですよね。ですが、いざ自分で手続となるとよくわからないという方が多い制度でもあります。
起業時の健康保険についてご相談される要因は、大きく2つあると考えられます。
1つ目は、「保険制度そのものがよくわかっていない」という点です。会社員時代は、保険料が毎月の給与から天引きされるため、自分で支払いや手続をする機会がなく、制度を意識しづらいという背景があります。
もう1つの要因は、「健康保険の種類が多く、どれを選択するか迷う」という点です。法人を設立して起業した場合は、「健康保険(協会けんぽ等)」が基本となるため、悩む要素は少ないと言えます。しかし、個人事業主として起業する場合、基本は「国民健康保険」となりますが、前職の健康保険の「任意継続」や、ご家族の「扶養」に入るなど、複数の選択肢が存在します。しかも、どの選択肢を取るかによって、保険料の負担額が大きく異なるケースもあります。このことが多くの方が悩まれる理由となっているようです。
2026年3月18日に、厚生労働省から「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて(※1)」という報道発表がありました。いわゆる「国保逃れ」に対して、健康保険の加入要件を厳格化する、という内容でした。
<(※1)出典:厚生労働省 法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて>
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000190457_00024.html
国民健康保険は、「前年度の世帯全体の所得」で保険料が決まる仕組みなのに対し、協会けんぽ等は、「毎月の給与額」で保険料が決まります。現制度では、副業で個人事業を営んで収入があったとしても、会社員として協会けんぽ等に加入している場合、健康保険料は「会社員として毎月受け取っている給与額のみ」をベースに決めています。
この制度の隙間をつき、本来国民健康保険が適用されるべき個人事業主等を対象に、会費を徴収した上で法人の役員に加入させ、使用関係の実態のないまま社会保険を適用させる、いわゆる「社会保険料削減ビジネス」が横行していました。上記の報道発表後、社会保険料削減ビジネスを行っていると疑われる事業所に対する調査・是正が行われてきました。また、調査結果を踏まえて、2026年9月14日に、「勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業主等に係る被保険者資格の取扱い等について(※2)」が報道発表され、健康保険の加入対象者をより厳格化する方向が明確にされました。
<(※2)出典:厚生労働省 勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業主等に係る被保険者資格の取扱い等について>
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_75927.html
このような「国保逃れ」が横行してしまった理由の一つには、動画サイトやSNS上にあふれる起業関連情報も少なからず影響しているように感じています。
現代は動画サイトやSNSで手軽に情報が集められる便利な時代です。しかしその反面、出所が不明な情報や、視聴回数・再生数を稼ぐことだけを目的とした極端な「裏ワザ的」な情報もあふれています。そうした情報に触れ、安易に不適切な手法を選んでしまうケースもあったかもしれません。正しい情報を見極め、制度に則った正しい形で起業のスタートを切っていきたいですね。
社会保険の仕組みは複雑でわかりにくい部分も多いですが、起業時の手続や事業運営において迷われた際は、ネットの情報だけで判断せず、ぜひお気軽に経営相談室をご活用ください。
経営相談室 スタッフコンサルタント 高松が担当しました。
▼高松 留美(たかまつ るみ)へのご相談(面談)
(2026年9月30日公開)
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