第564回 新しい経営戦略|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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新しい経営戦略

  • 計画的戦略
  • 創発的戦略
  • 統合型戦略

計画的戦略

こんにちは。経営相談室の三輪です。
PDCAを回しても計画どおりに進まない。それは「やり方」ではなく、「戦略形成プロセス」を誤っているからかもしれません。今回は、戦略アプローチとして代表的な3つのプロセスをご紹介します。

戦略は実態に応じ使い分けることが大切

戦略は実態に応じ使い分けることが大切

前回は、経営戦略の本質とは、目的を実現するための「方向性」であるとご説明しました。これは従来から用いられてきた考え方で、いわゆる「計画的(意図的)戦略」と呼ばれています。
企業があらかじめ定めた目的や方針に基づき、トップダウンで計画的に戦略を策定し、事業戦略や機能別戦略へと落とし込んでいく方法です。つまり、戦略の「方向性」としては企業理念や目的によって定められるため、頻繁に変化させるものではありません。
しかし、現実の経営環境は常に変化しており、計画どおりに進まないことも増えています。こうした状況変化への対応策として注目されているのが「創発的戦略」や「統合型戦略」です。

創発的戦略

環境変化が激しく消費者ニーズも多様化するなかで有効なのが、現場で即座に戦略を創り出していく「創発的戦略」です。現場の社員は、状況の変化や顧客ニーズを最も早く察知できる立場にあります。そのため、現場主導で施策(戦術)を試行し、成功した取り組みが積み重なることで、結果として戦略へと昇華していきます。
このように、創発的戦略とは「組織が意図せずとも実際の行動の積み重ねから結果として形成される戦略」と定義されています。重要なのは、単に戦略を変更するのではなく、学習を繰り返しながら最適と考えられる戦略を創り出し、最終的に有効と判断された戦略を実行に移すということです。
ここで、「戦略を変化させるべきかどうか」という議論が生じます。この点は「戦略形成プロセス」の観点で整理できます。

「戦略形成プロセス」
・トップダウン(組織構造:ピラミッド型):計画的(意図的)戦略と相性が良い
・ボトムアップ(組織構造:フラット型):創発的戦略が形成されやすい

つまり、どの戦略アプローチが適するかは外部環境だけでなく、企業内部の条件、例えば組織構造(ピラミッド型・フラット型)、業種特性、事業ステージや目的といった内部要因にも左右されます。そのため、戦略アプローチの選択は外部要因と内部要因の両面から判断することが重要です。

統合型戦略

近年では、計画的(意図的)な方向性を持ちながらも学習によって進化していく「統合型戦略」も注目されています。これは、意図的戦略の特徴である「計画性」と、創発的戦略の特徴である「柔軟性・学習性」を統合し、両立させる戦略形成プロセスです。すなわち、企業理念や目的に基づく一貫した方向性を保ちながら、現場で得た学びを取り入れて戦略を更新していくため、変化への適応と一貫した方向性の両方が求められる「新規事業開発」や「事業承継」などの局面にも適しています。

以上の3つの戦略形成プロセスは、どれが「正しい」あるいは「優れている」というものではありません。内部要因(組織構造、業種特性、事業目的など)も踏まえ、企業を取り巻く外部環境(市場の変動性・業界特性・不確実性など)に応じて柔軟に使い分けることで、より実効性の高い戦略を構築することができます。

経営相談室 スタッフコンサルタント 三輪が担当しました。

▼三輪 華奈(みわ かな)へのご相談(面談)

(2025年12月10日公開)

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