第533回 交渉について~ゼロサム交渉とノン・ゼロサム交渉|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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交渉について~ゼロサム交渉とノン・ゼロサム交渉

  • 関税に関するニュース
  • ゼロサム交渉とノン・ゼロサム交渉
  • 関税に関する交渉の行方

関税に関するニュース

最近、某国が関税という手段で各国に「DEAL(取引)」を仕掛けていることが、大きなニュースになっています。取引の際に「交渉」が行われるのは、国家間に限らず、会社間でも同様ですので、今回のニュースを交渉という視点で考えてみたいと思います。

関税交渉の行方に注意しましょう!

関税交渉の行方に注意しましょう!

ゼロサム交渉とノン・ゼロサム交渉

交渉は大きく「ゼロサム交渉」と「ノン・ゼロサム交渉」に分けられます。ゼロサムとは、一方が得をすれば他方が損をする、という意味で、ゼロサム交渉とは、いわゆる「パイの奪い合い」であり、大きさの決まったパイをお互いがいかにたくさん奪えるか、という交渉になります。
ゼロサム交渉は当事者間の力関係が大きく影響するパワープレーであり、今回のニュースでは某国が自国の巨大市場を背景に、立場の弱い国に対してパワープレーを仕掛けてきていると言えます。構図としては、パワープレーをしてくる大企業と、その大企業への依存度が高い中小企業との間の交渉と同じです。この場合、立場の弱い側が交渉でできることは、受け入れられない合意を押し付けられないようにすることと、手持ちのカードをフルに活用して自国の利害をできるだけ満足させるよう努力することくらいであり、そういう意味で交渉は万能ではありません。しかし、このゼロサム交渉は、パートナーとして持続的な信頼関係の構築には不向きで、弱い立場の方はいずれ逃げ出してしまう可能性があります。
一方、ノン・ゼロサム交渉とは、交渉当事者がお互いに相手の問題点を理解し、お互いにとってメリットになる条件を積極的に見つけるための問題解決交渉であり、パイを大きくし、互いにWIN-WINをめざすものとなります。

関税に関する交渉の行方

今回のニュースの問題点のひとつは、自由貿易という最も効率的な経済システムを関税で制限していくため、実は、奪い合うパイそのものが縮小し、DEALを仕掛けてきた某国も結局のところ損をし、勝者がいなくなる可能性が高いということです。とはいえ、某国にもこうしたDEALを仕掛けてきた背景となる問題点が存在していますので、各国はパートナーとして某国の問題解決と、自分たちのパイの大きさを維持することに知恵を絞ると共に、今回明らかになった某国のカントリーリスクにどう対処するかを抜本的に考えていくと思われます。
現時点では先行き不透明ですが、世界の秩序が根本的に変化する可能性がありますので、交渉の行方が自社にどのような影響を及ぼすのか注視しておく必要があると思います。

経営相談室 スタッフコンサルタント 泉が担当しました。

▼泉 仁史(いずみ ひとし)へのご相談(面談)

(2025年5月7日公開)

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