第337回 コロナ禍における飲食店経営と新規ビジネスに必要な「4つの視点」|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

中小企業の経営者・起業家の皆様を支援する機関。大阪産業創造館(サンソウカン)

なかのひと
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コロナ禍における飲食店経営と新規ビジネスに必要な「4つの視点」

  • ウイズコロナで登場した飲食店の新たな取組事例
  • 新規ビジネスを考えるための「4つの視点」
  • 飲食店の楽しみの根幹

ウイズコロナで登場した飲食店の新たな取組事例

みなさん、こんにちは。経営相談室の大西です。

新型コロナウイルス感染症の影響でしばらく行ってなかったお好み焼き屋さんが、改装されてリサイクルショップになっていました。飲食店の跡地は飲食店になるだとうと思い込んでいたので、少し驚きましたが、以前も同じようなケース(お好み焼き屋からリサイクルショップに改装)を見たことがあるので、ビジネスチャンスがあるのかもしれません。

事例を参考にしましょう。

事例を参考にしましょう。

たしかに、飲食店の立地は厳しい店舗も、周辺の住宅地をみれば「不用品を有料で処分するぐらいなら、安くても売りたい」といったニーズはありそうです。さらに、滞在時間が増えることで部屋の模様替えなどを行った結果、不用品が増えている背景があるかもしれないなと推測しています。

3回目の緊急事態宣言期間が延長され、経済活動が抑制される厳しい状況が続いていますが、そんな中でも飲食店の新しい取り組みがありますのでご紹介いたします。

・完全非接触型のハンバーガーショップ
東京に完全非接触型のハンバーガーショップが誕生したようです。完全非接触と謳うだけあって、専用アプリで注文し、スマホ決済、店内ロッカー受け取りと非接触に徹底しています。しかも、プチグルメバーガーが170円と驚きの価格です。

・ネット注文(宅配)に特化したキッチンのみの店舗
客席を設けない宅配専用の調理施設で、投資費用を抑え、利用料のみで飲食店を開業できるのが特徴です。ゴーストレストラン、シェアキッチン、クラウドキッチンなどのタイプがあります。

・餃子の自動販売機
地元のランニングコースで生餃子の自動販売機を見かけました。自動販売機を餃子用に改良したものでシンプルなアイデアでしたが、他の食品にも転用できそうでした。自動販売機でバーコード決済ができればこれも完全非接触になります。生餃子のテイクアウト販売は他にも複数事例があります。

完全非接触ではないですが、店内注文をオーダーエントリーシステムに変更する相談も以前より増えてきました。感染予防対策への意識の変化が伺えます。ちなみに、完全非接触型のハンバーガーショップの系列で、1人1台のロースターで好きな部位を食べられる焼肉店もあるようです。

昨年の緊急事態宣言下では、テイクアウトメニューで凌いでいた印象がありましたが、今後はウイズコロナに適した店づくりの事例が増えることを期待しています。

こういった事例の背景には、キャッシュレス決済の利用者の増加や宅配デリバリーの普及など環境が整ってきたからこそできるものではありますが、環境の変化をうまく捉え、テイクアウトやデリバリーで課題だった低い収益性を克服することが期待されるアイデアです。

新規ビジネスを考えるための「4つの視点」

アイデア発想には、“オズボーンのチェックリスト”や“マンダラート”などが用いられますが、今回は、簡単な方法として、「鳥の目」「虫の目」「サカナの目」「コウモリの目」の「4つの視点」をご紹介します。以下のような、視点を使って新しいビジネスを考えるものです。

・「鳥の目」:飛んでいる鳥の視点のように全体を俯瞰する見方です。
冒頭のリサイクルショップのケースでは、飲食店は厳しい状況ですが、俯瞰することで、他の業界(ここではリサイクル市場の増加)の可能性を見ることができます。

・「虫の目」:虫のように至近距離から、深く観察する視点です。
リサイクルショップのケースでいうと、住宅環境が集中している場所を深く観察すると、ニーズの詳細(「不用品を処分したい」)を把握することができます。

・「サカナの目」:川の流れを見るように、これまでの傾向やそこから見える将来の可能性を探る視点です。
感染予防対策のためのオーダーエントリーシステム導入は、時流の変化を踏まえた「サカナの目」に該当するでしょう。

・「コウモリの目」:逆転の発想や異なる分野との融合を考える視点です。
ハンバーガーショップの完全非接触のケースでは、「コウモリの目」で見ることで、他分野との融合(スマホアプリやキャッシュレス決済)の可能性が見えてきます。

飲食店の楽しみの根幹

今後もいろんな業態が登場することが期待されますが、どんな新しい業態であっても、“選ばれる理由”はしっかり考えておきたいポイントです。

飲食店の楽しみの原点は、食べることだけでなくそこでの時間の過ごし方やメニュー選択などの体験にあります。

商品やサービスだけでなく、アフターサービスを含めた店舗体験を通じて、お客様に喜んでもらい、自店を選んでもらう取り組みは、完全非接触ビジネスであっても蔑ろにできません。これを踏まえ、最近では、カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験)の向上に取組む店舗も増えています。カスタマーエクスペリエンス向上に向けた取組では、カフェなどで快適な時間を過ごしてもらうための施策によりユーザーの期待以上の体験提供を目標にして会社全体で活動をしていきます。カフェでゆっくりする時間を提供するのは、現時点では難しいものですが、新しい事例がでてくることを期待しております。面白い事例があればご紹介したいと思います。

今回は、新規事業のアイデアやカスタマーエクスペリエンスについてご紹介しましたが、活用するには慣れが必要です。いくつかの事例を参考に、いつもとは違った視点で新規ビジネスを考えてみてはいかがですか?

経営相談室 スタッフコンサルタント 大西 が担当しました。

大西 森(おおにし しげる)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 大西 森(おおにし しげる)のプロフィール

(2021年6月2日公開)

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