ご存じのように日本は人ばかりか企業も長寿の国です。
老舗企業は絶えず変化し続けている
業歴100年を超える老舗企業は全世界で7万5000社(2022年)、そのうち日本は4万3000社超(2023年9月) と半数以上です(※1) 。その日本の老舗企業で倒産が急増しています(※2) 。考えられる要因として、後継者難、コロナ禍での業績低迷やコンプライアンス違反などが理由として挙げられています。しかし、その元をたどると長い業歴に胡坐をかき、時代に取り残された事業そのものが根本の要因として挙げられるのではないでしょうか。
老舗が事業を継続するためのヒントが、競技場から飛び出して行った開会式や、宮殿や展覧会場などを競技場として使うなど、今までとは趣が違った大会となったパリ五輪大会にあります。前回の東京五輪までのように新設のほぼ専用競技場でおこなうといった固定概念を打ち破った開催であったところにヒントを見ることができます。(もちろんいろいろな意見も錯綜してはいますが)。
さほど注目されませんでしたが、「国体(国民体育大会)」が「国スポ(国民スポーツ大会)」と名称変更したことにもそのヒントがあります。
第1回の国体は昭和21年に開催され、戦後復興の意味合いが色濃く反映して生まれましたが、時代が過ぎ都道府県開催も二巡したことで開催意義が問い直されました。その結果、「体育」という名称から受ける上意下達の意味合いも時代とともに合わなくなったと判断され、楽しむ、遊ぶなどの意味合いのある「スポーツ」のほうが適しているのでは、ということで今回の変更となったようです(そこには「スポーツ振興法」を全面改正した「スポーツ基本法」の制定があります)。
再度話が変わり、長寿商品のインスタントラーメンの味が、微妙に変わってきていることにお気づきでしょうか。私は全く気が付いていません。消費者に飽きられないように、メーカーがほんの少しずつ味を変えているようです。
パリ五輪の開催スタイルや国体の名称の変更、ラーメンの味の変化などは、時代とともに変わりゆく環境に呼応するために必然的に行われた結果ともいえます。
そこには老舗であるがゆえに参考にすべきものがあります。消費者や得意先に飽きられないように策を講じ、100年を超える企業でも、創業時そのままの事業を続けているところはほとんどありません。何らかの変化をしながら事業を継続させているのです。
第331回で取り上げたように、経営に向きあっていると絶えず課題が生まれ、その解決のヒントに思わぬところで出会うことがあるのです。決して現状に満足せず、かつ自社の意向を取引先や消費者に押し付けるのではなく、今何を求められているかといった顧客目線での経営が、老舗企業を作り上げるのです。100年続く企業は、その時々に求められるものを探し求め提供し続けた結果、今の姿があるのではないでしょうか。
これらの老舗企業の経営指針は、今後100年企業をめざされる経営者にも大いに参考になると思います。
経営相談室 コンサルタント 田口が担当しました。
(※1)出典:帝国データバンク「全国「老舗企業」分析調査(2023年)」(2023年10月30日)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p231012.html
(※2)出典:帝国データバンク「100年経営「老舗企業」の倒産動向調査(2024年上半期)」(2024年7月19日)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240714.html
▼田口 光春(たぐち みつはる)へのご相談(面談)
(2024年9月25日公開)
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