第437回 サービス業におけるクレーム対応のポイント|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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なかのひと
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サービス業におけるクレーム対応のポイント

  • 行き着けの美容院で聞いたクレーム
  • サービス業の特性
  • クレームを未然に防ぐには

行き着けの美容院で聞いたクレーム

経営相談室の東です。
先日行きつけ美容院で担当の美容師Aさんがスタイリストになって半年足らずのころのクレーム体験を聞きました。

サービスのプロセスを可視化しましょう

サービスのプロセスを可視化しましょう

ある日、美容院の口コミサイトを見て新規顧客が来店。対応できる状態にあったのはAさんのみだったので、施術を担当することになりました。
その顧客は「カット」を要望され、どんなイメージにしてほしいかを確認すると、「お任せする」との返答だったそうです。
その顧客は髪型に対するこだわりがないタイプなのかという思いと、自分の力量を試せる機会が得られたとやる気になったAさんは、自分のイメージする髪型にすべく、早速カットを始めました。施術後、顧客からの反応は特になかったため、Aさんは自分のカットに納得してくれていると思い、その日の仕事を終えたそうです。

しかし、翌日になって、「セットがとてもしづらいし、気に入らない髪型なので返金してほしい。」というクレームの電話が入りました。電話口でAさんは提供したサービスには時間も労力もかかっているので、返金はできないことを説明、納得いくまで再度カットをすることを申し出たものの、顧客は「思い通りにならなかったのだから返金してほしい、もう二度と店にはいきたくない」の一点張り。
電話でのやりとりがしばらく続いた後、激昂した顧客は、「要望に応じられないのなら訴えてやる」と喚き散らしだしました。

サービス業の特性

美容院という業種はサービス業であり、サービス業ならではの特性によりクレームが生じやすいといえます。

①無形性
形のある商品であれば、購入者は目で見ることができ、事前に希望しているものか確認できますが、サービスは無形であり、顧客は予め享受できるサービスの内容を確認できません。
②非均質性
同じ料金設定であってもサービスの品質は提供者による属人性が高く、サービスのレベルや質を均一にすることが難しいという特性があります。
③不可逆性
サービスを提供した時間や内容を元に戻すことはできません。元に戻せないことに対して、他の代替手段で対応することを申し出ても、顧客の理解を得られないとクレームにつながる可能性があります。
④生産と消費の同時性
サービスは提供者と享受者が同時にその場に存在しなければ成立しません。
そのため、クレーム後の対応を図る際に、再度、サービス提供に必要な環境にて、別途時間を取らせることを顧客側に強いることになります。

クレームを未然に防ぐには

結局、困り果てたAさんは、このままでは埒が明かないと思い、オーナーに相談して折り返し連絡することを伝え電話を切りました。
オーナーはAさんの対応にも否があったものの、その顧客は自店にとって信頼関係が構築できる顧客ではないと判断し、返金に応じることを決めました。来店を拒否していることもあり、オーナーとともに顧客の自宅を訪問。自店では顧客の要求に応えられる技術力がないので、今後の対応はできかねると丁重に伝えてクレームの対応を終えたそうです。

提供する施術の技術向上を図ることはもちろんですが、前述のサービス業の特性を考えると、サービス提供者の独断で進めるのではなく、顧客と関わるプロセスにおいて、いかに顧客とコミュニケーションを図るかが重要であることがわかります。

1)サービス提供の前段階
顧客はサービスを受ける前に、サービスを受けた結果どのようになりたいか、何らかの期待をもって来店します。サービスを提供する側が、顧客の頭のなかにある期待する内容を引きして顧客とのイメージのすり合わせをすることがボタンの掛け違いをなくすポイントになります。

例えば、用意した顧客カルテに基づきヒアリング内容を相互確認するなどして、共通認識が図れるような工夫も必要です。また、どのように質問すれば、顧客の頭の中にあるイメージを言葉として発出しやすくなるか、質問の仕方などについて予めスクリプトを用意しておくことも有用です。

2)サービス提供中の段階
技術やノウハウという目に見えないものを提供しているので、サービス提供者が何を意図してサービスを行っているのか、理解が及ばない顧客もいます。
自分のサービスを受けることによってどのように変わるのか、今行っていることは何を意図しているのかなど、プロセスごとに声掛けをこまめに行い、納得しているかどうかを確認しながら進め、できるだけ認識の相違を発生させない配慮が重要です。

3)サービス提供後の段階
サービス終了後には、顧客の想定していた状態になっているか、不具合はないかの確認を怠らないことが重要です。
さらに、業種によってはセルフケアなど、プラスαの情報をお伝えすることによって、満足度の向上につなげることもできます。

サービスの提供前から終了後の段階まで、一連のサービスのプロセスを可視化することで、未然にクレームを防ぐポイントも見えてきます。
経営相談室でもサービスのプロセスを洗い出すサポートをさせていただきますので、ぜひご利用ください。

経営相談室の東が担当しました。

東 純子(あずま じゅんこ)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 東 純子(あずま じゅんこ)のプロフィール

(2023年6月14日公開)

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