第312回 「合理的」の基準って?同一労働同一賃金をめぐる最近の動き|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

中小企業の経営者・起業家の皆様を支援する機関。大阪産業創造館(サンソウカン)

なかのひと
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「合理的」の基準って?同一労働同一賃金をめぐる最近の動き

  • 同一労働同一賃金って??
  • 中小企業も2021年4月から対象に
  • 「合理的な理由」があるか、現状を見直しておこう

同一労働同一賃金って??

みなさん、こんにちは。経営相談室の高松です。

早いもので、2020年もあと1か月ちょっととなりました。例年なら忘年会続き、という方も多いと思われますが、今年は少し様子の違った年末になりそうですね…

「個別に判断」。それが一番難しい。

「個別に判断」。それが一番難しい。

さて、今回は、同一労働同一賃金の話題を取り上げます。

突然ですが、皆さんの会社には「賞与制度(ボーナス)」はあるでしょうか?(今年は新型コロナウイルス感染症の影響で減額、見送りといった報道も多いですね…)

雇用・労働に関しては、様々な法律で「やらなければいけないこと」「やってもいいこと」「やってはいけないこと」が決められています。
実は、賞与制度自体は必ず設けなければいけない制度ではありません。賞与は「やってもいいよ」という制度なので、賞与制度自体がない会社も存在します。(ちなみに、「制度があること」と「実際に支給されること」はまた別の話。)

では、賞与制度はあるけれど、支給対象はフルタイムで働く正社員だけで、パートタイム、アルバイトで働く人には支給しない、という制度はOKでしょうか?こちらは、同一労働同一賃金の観点から、「やってはいけないこと」に引っかかる可能性があります。

え?同一労働同一賃金って、月々の給与だけの話じゃないの?と思った方もおられるのではないでしょうか。

同一労働同一賃金は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」で規定されています。

厚生労働省のHPによれば、「同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消をめざすもの」。つまり、同一労働同一賃金とは、賃金(月々の給与)のことだけではなく、賞与や手当、退職金、特別休暇の付与といった、あらゆる労働条件に及ぶのです。

中小企業も2021年4月から対象に

パートタイム・有期雇用労働法は、2020年4月1日から大企業を対象に施行されています。そして2021年4月1日からは中小企業にも対象が拡大されます。今のうちに「自社は問題ないか?」をチェックしておく必要があります。

チェックの参考になるものとして、厚生労働省からガイドラインが示されています。

<厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

さらに、2020年10月には、「不合理な待遇差」をめぐって最高裁判所でいくつかの判決が出されました。これらも自社の体制を見直すうえでの参考になります。
<令和1(受)1055  地位確認等請求事件>
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89767
<令和1(受)1190  損害賠償等請求事件>
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89768
<平成30(受)1519  未払時間外手当金等請求控訴,同附帯控訴事件>
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89771

判決については、ニュースでも取り上げられていたので、ご存じの方もおられるかもしれません。判決の結果だけを見ると、「賞与や退職金は正社員とアルバイトで差をつけてもいいけど、休暇や手当は差をつけてはダメ」ととらえてしまいそうですが、大事なのは示された判断基準のほうです。

「合理的な理由」があるか、現状を見直しておこう

判断の基準になったのは、賞与や手当、退職金、特別休暇の付与といった制度が、「その性質や目的を踏まえて、職務内容、職務内容・配置の変更の範囲、その他の事情を考慮したときに、違いを設けることが不合理といえるかどうか」。

「正社員だから」「アルバイトだから」という雇用形態だけを理由にした説明では合理的な理由がある、とは認められません。担当している仕事や責任の重さ、配置が変わる可能性があるかどうか、といった仕事の内容や条件を細かく見て、「正社員とアルバイトがやっている仕事にはこんな違いがある、だから待遇にも違いが出てくるんです」と説明できるかどうか、その説明が「たしかにそれなら差をつける理由があるよね」といえるかは個別に判断します、というのが今回示された判断基準です。

企業側に求められる対応は、まずは現状の見直しが挙げられます。正社員とアルバイトで待遇に差がないか、また待遇に差があるのならそれが実際の仕事に連動しているか、を点検してみましょう。

もし実際の仕事が同じで待遇に差がある…という場合は、待遇を同じにするか、業務の切り分けを行うなどして、「この役職・ポジションの仕事の範囲はここまで」といえる体制を整える必要があります。

日常の仕事の線引きを明確にするのは難しいところでもありますが、これを機に社内の業務の見直しを進めてはいかがでしょうか。
具体的なご相談は、ぜひ経営相談室をご利用ください。

経営相談室 スタッフコンサルタント 高松 が担当しました。

高松 留美(たかまつ るみ)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 高松 留美(たかまつ るみ)のプロフィール

(2020年11月25日公開)

大阪産業創造館 経営相談室

06-6264-9820
(9:00~17:30※土日祝除く)