みなさん、こんにちは。経営相談室の高松です。
今回も産休・育休に関する話題を取り上げます。
制度を使うには、まず知ることが大事!
厚生労働省がまとめた「令和5年度雇用均等基本調査」(※1)によると、育児休業を取得した人の割合は、女性84.1%(令和4年度調査では80.2%)、男性30.1%(同17.13%)でした。2023年4月から、従業員1,000人を超える企業の事業主に男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられたからなのか、この1年で男性の育児休業取得率が大きく伸びたことが見て取れます。「公表しなければいけないから男性にも育休を取得させる」という意識からスタートした結果であったとしても、先例を作ることが「男性も育休を取るもの」という機運醸成につながるのではないでしょうか。
第536回でも紹介した育児・介護休業法の改正により、男性労働者の育児休業等の取得状況の公表義務が、従業員が300人超1,000人以下の企業にまで拡大されました。取得状況の公表と男性の育休取得とが連動するのであれば、今年度以降、さらに取得率は上昇するかもしれません。
一方で、気になる調査結果もありました。厚生労働省の委託調査として行われた「令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」(※2)には、妊娠出産育児を理由に、10年以内に離職した経験のある女性を対象とした調査結果が掲載されています。離職の理由として、「勤務先に産前・産後休業や育児休業の制度が整備されていなかった」という回答をしている人が、かなりの割合で存在しています。離職のタイミングでかなり細かく分類されているのですが、例えば「妊娠が判明して離職した人」の区分では、正社員として雇用されていた人の29.2%、正社員以外で雇用されていた人の41.3%が、「制度が整備されていなかった」ことを理由に離職しています。
たとえ就業規則などに規定がなかったとしても、産休・育休が制度としてない会社はありません。産前産後休業は労働基準法に規定されていますので、最低基準として、労働基準法の内容が適用されます。
育休についても、厚生労働省の「イクメンプロジェクト」のFAQ(※3)に、「会社に育児休業に関する制度はないのですが、取得することは可能ですか?」という質問に対して、対象外となる労働者は存在するものの、「会社に育児休業制度がなくても、育休は取得できる」という回答が掲載されています。
制度はあるはずなのに「制度が整備されていなかった」という理由で離職する人がいる、という結果から考えられることの一つに、「制度に対する認識のずれ」があったのではないかと思います。中小事業者の場合、従業員から産休・育休を申し出られた経験がない、また、産休・育休を申し出る従業員側も申し出た経験がない、ということが十分想定されます。「就業規則がない/就業規則に記載がない=自社には産休・育休はない」といった誤った認識から、「離職」という選択を取ってしまうこともあったのではないか?という懸念を感じました。
育児・介護休業法の改正により、2025年10月からは、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する事項について、労働者の意向を個別に聴取することが、事業主の義務になります。
厚生労働省:育児・介護休業法について(リーフレット「育児・介護休業法改正のポイント」)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
なにかと改正の多い労働関連の法律ですが、「制度を知ってもらうこと」の重要性を改めて感じる内容の改正です。
はじめての産休・育休対応に備えて、何から手を付ければいいかわからない!という場合は、まずは「従業員に制度を知ってもらうこと」から始めてみてはいかがでしょうか。
経営相談室 スタッフコンサルタント 高松が担当しました。
(※1)出典:厚生労働省 令和5年度雇用均等基本調査 (報道用発表資料)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r05.html
(※2)出典:厚生労働省 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 令和4年度厚生労働省委託事業 (労働者調査報告書)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200711_00006.html
(※3)出典:厚生労働省 イクメンプロジェクト (育休検討中の方 育児休業についてよくある質問)
https://ikumen-project.mhlw.go.jp/employee/faq/
▼高松 留美(たかまつ るみ)へのご相談(面談)
(2025年6月18日公開)
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