みなさん、こんにちは、経営相談室の谷口です。
部下の本音、聴けていますか?
経営者や管理職の皆さまは、「最近、部下の本音が分からない」、「若手がすぐに辞めてしまう」、「チームに一体感がない」といった悩みを抱えていないでしょうか。日々の業務に追われる中で、社員一人ひとりとじっくり話す機会を作るのは難しいかもしれません。だからこそ、意識的に対話の時間を設ける「仕組み」が重要になります。
今回は、有効な手法として注目されている「1on1ミーティング(以下、1on1)」について、その効果や具体的な進め方、成功のポイントを解説します。
1on1とは、上司と部下が1対1で定期的に行う対話のことです。従来の人事評価面談が、評価を主な目的とするのに対し、1on1は「対話による部下の成長支援」を目的としています。特に、部下とのコミュニケーション不足を感じている経営者や管理職の方に、試していただきたい手法です。
1on1を導入するメリットは大きく3つあります。
1)信頼関係の構築
評価を気にする必要のない場で、仕事の悩みからプライベートな出来事まで話すことで、お互いの人となりを理解し、心理的な距離が縮まります。また、上司が自分を気にかけていると感じることで、部下は安心して仕事に取り組めるようになります。
2)部下の主体的な成長の促進
対話を通じて、部下自身が自分の課題や目標に気づき、解決策を考えるきっかけになります。上司は答えを与えるのではなく、質問を投げかけることで、部下の内省をサポートします。これにより、自分で考えて行動する力が養われます。
3)離職率の低下
仕事や人間関係に関する悩みや不満を早期に把握し、解消に向けた手助けができます。会社が自分のキャリアを真剣に考えてくれていると感じることで、仕事への熱意や貢献意欲が高まり、定着につながります。
1on1は、ただ雑談をするだけでは効果がありません。効果的に進めるためには、事前の準備とルール作りが重要です。
まず導入にあたり、①目的の共有、②ルールの設定、③スケジュールの確保、の3ステップで進めましょう。
①目的の共有:
なぜ1on1を始めるのか、その目的を社員に丁寧に説明します。「これは評価面談ではなく、あなたの成長をサポートするための時間です」というメッセージを伝え、安心して話せる場であることを理解してもらいましょう。
②ルールの設定:
頻度は2~3ヵ月に1回など、無理のない範囲から始めてみましょう。1回あたり30分程度が目安です。場所は、周りの声が気にならない会議室など、落ち着いて話せる環境を選びます。また、話した内容のプライバシーは守ることを約束し、安心感を持ってもらうことも大切です。
③スケジュールの確保:
1on1は継続することが何よりも重要です。他の重要な会議と同様に定期的な予定として時間を確保しましょう。上司の都合で安易に中止しないことが、「あなたは大切だ」というメッセージになり、部下との信頼関係につながります。
当日の対話では、業務の進捗確認だけでなく、以下のようなテーマについて話すのがおすすめです。
・心身の健康状態や最近のプライベートでの出来事
・現在の仕事で感じているやりがいや課題、悩み
・今後のキャリアで挑戦したいことや学びたいこと
・職場の人間関係について感じていること
あくまで主役は部下です。上司は聞き役に徹し、部下がリラックスして話せる雰囲気作りを心がけましょう。
最後に、1on1の効果を最大限に引き出すためのポイントを2つお伝えします。
一つ目は、上司の「聴く姿勢」です。話す割合は「上司2割、部下8割」を意識し、部下の話に耳を傾けてください。途中で話を遮ったり、自分の意見を押し付けたりするのは禁物です。「なるほど」、「もう少し詳しく教えて」といった相槌や質問で、部下が話しやすいように促しましょう。部下の意見や考えを否定せず、まずは受け止めることで、「この人には本音を話しても大丈夫だ」という安心感が生まれます。
二つ目は、対話の「振り返り」と「次への行動」です。1on1の最後に、今日話した内容を簡単に振り返り、小さなことで構わないので、次までに部下が取り組むことを一緒に決めましょう。そして次回の冒頭でその進捗を確認します。これを繰り返すことで、部下は自分の成長を実感でき、1on1がより有意義なものになります。
1on1は、すぐに劇的な変化が表れるものではありません。しかし、粘り強く続けることで、部下との信頼関係が深まり、個人の成長、ひいては組織全体の成長へとつながっていきます。まずは試験的にでも、特定の部下と始めてみてはいかがでしょうか。
具体的な進め方などでお悩みの場合は、経営相談室にご相談ください。
経営相談室 スタッフコンサルタント 谷口が担当しました。
▼谷口 睦(たにぐち むつみ)へのご相談(面談)
(2025年9月10日公開)
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