みなさん、こんにちは。経営相談室の高松です。
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉の通り、厳しい暑さもようやく和らいできました。ようやく秋の気配ですね。食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋…いろんな「秋」がありますが、「賃金改定の秋」と思ってしまうのはおそらく職業病です……
先を見越して準備が大事!
というわけで、今回は「賃金」について取り上げます。
皆様は、「給与・賃金」という言葉に対して、どんなイメージ・思いを持たれますか?
「うれしい」「待ち遠しい」「ほしいものが買える」「どうやったら上がるんだろう?」
会社員として働いていたころの私は、こんなイメージを持っていました。
「給料はもらうものじゃなくて払うものだと思っていた」
これは、事業を経営するご両親のもとで育った知人の言葉です。これを聞いた時、経営者と従業員との視点の違いを端的に示しているな、と納得してしまいました。
賃金をもらう側にとって、賃金の引上げはありがたい話ですが、賃金を支払う経営者側にとっては、収益に直結する重要な問題。
担当してもらう業務内容や、働く人のスキル、人件費にかけられる予算など、さまざまな要素を勘案して決める必要があり、「賃金の決め方」はよくある経営相談の一つです。基本的には、経営者と従業員とが納得すれば、自由に決めてよいのですが、法律で規制されている内容もあります。その一つが「最低賃金」です。
原則自由に決めてよい賃金ですが、「最低賃金法」という法律を根拠に、毎年最低賃金が定められます。
現在はやや事情が異なる面もあると思いますが、労働法の世界では「経営者(雇用主)=強者、従業員(労働者)=弱者」という図式が念頭にあります。ざっくりイメージでいえば、「強い立場にある経営者が、不当に安い賃金で従業員を働かせるようなことがないように、従業員が生活できるレベルの賃金を保障する」のが最低賃金の役割です。
例年、10月1日頃に改定される最低賃金。
生活コストは地域によって差があるため、最低賃金は都道府県ごとに定められています。
ニュースで耳にする最低賃金は、多くの場合この都道府県ごとの最低賃金である「地域別最低賃金」をさしています。(ちなみに、地域別最低賃金の他に、特定の産業に適用される「特定最低賃金」というのもあります。)
2021年10月1日から、大阪府の最低賃金は、これまでの964円から28円引き上げられ、時給換算で992円となります。
<仮定>1日8時間労働で週5日勤務(1か月の勤務日数20日)を最低賃金で雇用している場合
改定前:@964円×8時間×20日=154,240円
改定後:@992円×8時間×20日=158,720円(+4,480円)
従業員が1人であれば、1か月あたりの影響は5,000円弱です。この金額だけだと、そこまで大きな影響はないようにも見えますが、従業員が複数いれば、人数分がそのまま増額になります。また、残業や休日出勤などをした際の割増賃金の計算基礎が上がります。
賃金の最低ラインが上がることで、最低賃金以上で働いている人の時給も上げなければ、業務内容と待遇のバランスが取れなくなることも考えられます。さらに、給与が上がると、雇用保険料や社会保険料も上がる可能性があります。
事業者の状況によりますが、最低賃金の改定は単純に時間当たり28円の増額では済まない可能性が高いといえます。
法律改正は自社ではどうにもできない外部環境の一つ。
しかしながら、法律改正はあるとき突然行われるわけでなく、事前に把握することができ、対策を練る時間があります。
現在の国の方針では、「全国平均で最低賃金1,000円が目標」となっています。
今回の改定で、全国平均の最低賃金は930円となりました。言い換えると、来年以降、数年かけて、70円程度は最低賃金が上がっていくものと想定されます。
短期的には、目の前に迫った最低賃金28円の増額に対応する、中長期的には今後のさらなる最低賃金上昇を見越して、売上や利益をどのように作っていくか、を検討することが重要です。
こういった予測できる変化に対しては、先々の見通しを立てる「経営計画の策定」が有効です。大阪産業創造館では、経営計画策定についてもご相談いただけますので、ぜひご活用ください。
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経営相談室 スタッフコンサルタント 高松 が担当しました。
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(2021年9月29日公開)
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