第304回 “相続”は本来、仏教の言葉!|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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なかのひと
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“相続”は本来、仏教の言葉!

  • 相続の“相”は“姿”つまり存在を意味する
  • 魅力ある事業を次の世代に残すことが経営者の使命
  • 日ごろの相続人との間での意思疎通が大事

相続の“相”は“姿”つまり存在を意味する

みなさん、こんにちは。経営相談室の田口です。

私は経営相談室スタッフコンサルタントのほか、大阪産業創造館 事業承継なんでも相談所の相談員をしています。

事業承継の肝は魅力ある事業かどうか

事業承継の肝は魅力ある事業かどうか

そうした関係からではありませんが、あるところで表題の言葉と出会い、とっても驚きました。
そこに書かれていたことは、まず“相続”の漢字の意味するところで、“相”、それは“姿”、つまり存在を意味しているとのこと。その存在“姿”が引き継がれることが“相続”ということ。その引き継がれる存在は永遠に連続していくもの、という意味が込められているとのことです。

決して金銭や不動産など財産を引き継ぐことだけを意味するのではないということでした。

魅力ある事業を次の世代に残すことが経営者の使命

大阪産業創造館での事業承継相談では、常々、事業承継とは事業そのものを引き継ぐことが重要であって、所謂財産の相続は二次的なものという立ち位置で対応しています。

それでも事業承継の相談には財産の相続という話題はつきものです。そうした金銭的価値あるものを引き継ぐことも大事な要件ですが、そこでは法律に定められた規則に従って行うことになります。そこでそうした相談があった場合は一定の範囲で説明や方向性をお示しできますが、詳しくは弁護士や税理士の資格をお持ちの専門家にお願いすることになります。

このように事業承継とは事業そのものを引き継ぐことであるとの考えのもとで相談に対応していますが、この“相続”の本来の意味に出会い、大いに納得させられました。創業者の創業の思いであり、代々引き継がれてきた事業に対する思い(家訓、社訓、経営理念といったもの)をつなげていくことが事業承継の本筋でしょう。

後継者が継ぎたいと思う事業を、次世代に渡すことが経営者の使命なのです。次世代が継ぎたくないと思う、苦労を背負わせるような事業を継承させる意味はどこにあるのでしょうか。冒頭で紹介した“姿”の意味をよくよく考えてみたいものです。

日ごろの相続人との間での意思疎通が大事

そういえば室町時代の能作者、能役者の世阿弥もその書「風姿花伝」で次のような文を世に残しています。「家、家にあらず。継ぐをもて家となす」と。その心は「家というものは続けばいいというものではない。代々の芸、思想を継承して初めて家を継いだことになる」ということなのです。そこには仏教の言葉の「相続」に通じるものがあります。事業承継にも通じるうんちくの詰まった言葉です。

確かに金銭的価値あるもの承継は、相続人間のトラブルや重い税金負担など多くの問題が内在しています。しかし、そうした問題で折角築き上げられた会社・事業が途絶えてしまうことになるとしたら、残念というしかありません。そうならないように、日ごろから引き継がせる人と関連する全ての相続人との間で意思疎通することが大切なのです。将来に亘って何を伝えていきたいかを。そのためにはどうすることがベストかを。

経営相談室 スタッフコンサルタント 田口 が担当しました。

▼田口 光春(たぐち みつはる)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 田口 光春(たぐち みつはる)のプロフィール

(2020年9月30日公開)

大阪産業創造館 経営相談室

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