みなさん、こんにちは。経営相談室の高松です。
気づけば2022年も1か月が終了してしまいました。日本の企業は3月末決算が多いこともあり、年度末に向けてのラストスパートとともに、そろそろ新年度に向けての準備を進めていこうか…という事業者様も多いかと思います。
毎年4月は改正ラッシュ
そこで今回は、新年度からの人事・労務関連のポイントについて取り上げます。
2022年4月1日から施行される人事・労務関連の主な改正として、下記3点があります。
■女性活躍の推進に関する改正
■育児休業に関する改正
■ハラスメント防止対策の強化に関する改正
女性活躍の推進に関する改正内容は、対象事業者の拡大です。
現在、常時雇用する労働者が301人以上の事業者に対しては、一般事業主行動計画の策定・届出義務や自社の女性活躍に関する情報公表の義務がすでに課されています。これが、令和4年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の事業者にまで拡大されます。
育児休業に関する改正内容は、育児休業をより取得しやすい環境づくりをめざすものです。
改正項目は5つありますが、令和4年4月1日から施行されるのは、このうちの2項目(育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和)です。
なお、育児休業に関する改正は、以前当ブログでも取り上げておりますので、そちらもご覧ください。
今回の改正の中でも、特に中小企業への影響が大きい改正が、「ハラスメント防止対策の強化に関する改正」です。
「パワハラ対策が義務化」といった話題を耳にされた方も多いかと思います。パワハラ防止措置について、これまで大企業に対しては義務、中小企業に対しては努力義務となっていました。これが、令和4年4月1日からは、中小企業に対しても「義務」が課されることになります。
「パワハラ」というと、上司が部下に対して行うもの、と思われがちですが、そうではありません。
パワハラの定義は、
①優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③労働者の就業環境が害されるもの
であり、①~③までの要素を全て満たすもの
となっています。
①の「優越的な関係を背景」というのは、役職上の上下だけでなく、
・ 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・ 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
といったものも含まれます。
言い換えると、誰もがパワハラを受ける側・する側になりえる、ということです。
今回の改正を機に、経営者・従業員の立場によらず、パワハラに対する意識を確認されてはいかがでしょうか。
なお、今回のハラスメント防止対策の強化で求められているのは、
・事業主の方針の明確化、周知
・相談窓口の設置、周知
・ハラスメントが発生した場合の措置
などです。
詳しくは、厚生労働省のリーフレット・パンフレットをご参照ください。
ざっくり全体像をつかみたい方は
「厚生労働省リーフレット『2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!』」
<簡易版>https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000635337.pdf
<詳細版>https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000683138.pdf
しっかり内容を把握したい方は
「厚生労働省パンフレット『職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました』」
をご覧ください。
私は体力の維持を目的として、マラソンをやっています。一方で、周囲のマラソン仲間の目的は、人によって異なります。リフレッシュのため、おいしくご飯を食べるため、健康維持のため、友人との交流のため…などです。
健康のために始めたマラソンにはまりすぎて、「マラソンでケガした」という知人もちらほら見受けます。健康が目的だったのに、手段であるマラソンが目的になってしまった…このような「手段の目的化」は、事業運営上でも多々起こります。
パワハラ防止措置でいえば、目的は「良好な職場環境を作って生産性を上げて、事業をもっとよくしていこう!」のはず。生産性の向上、業績の向上につなげるために「ハラスメントのない職場づくりに取り組む」はずが、「ハラスメントを起こさない職場にすること」が目的となっているケースを見かけます。
「何がハラスメントになるのか?」という線引きが難しいこともあって、「ハラスメントと言われるのが怖くて、指導できない」というお声も伺います。
このように悩まれている場合は、本来の目的に照らして、「事業者にとっても、従業員にとっても、プラスにつながるか」「自社と取引先とがwin-winの関係になれるか」という視点で行動を振り返ってみてはいかがでしょうか。
人事労務関連の改正目的は、いずれも「事業をよりよくするため」。手段である「義務への対応」も、目的を見据えて進めば、少しは負担感なく取り組めるのではないでしょうか。
マラソンも走っているときは苦しいですが、「ゴール後のうまいビールのため」なら頑張れるのに似ているかも!?
経営相談室 スタッフコンサルタント 高松 が担当しました。
高松 留美(たかまつ るみ)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 高松 留美(たかまつ るみ)のプロフィール
(2022年2月2日公開)
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