第410回 「扶養の範囲がお得」は本当か?を試算してみた|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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なかのひと
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「扶養の範囲がお得」は本当か?を試算してみた

  • 社会保険に入ったら、どのくらい年金額が増えるのかわからない
  • 2つのシミュレーションツールで試算
  • 試算結果はこうなった!

社会保険に入ったら、どのくらい年金額が増えるのかわからない

みなさん、こんにちは。経営相談室の高松です。

前回のブログで、社会保険の対象拡大について取り上げました。

予測が立てば、今の行動も決めやすい

予測が立てば、今の行動も決めやすい

「社会保険の対象=手取りが減る=130万円の壁の内側で働こう」という声をよく聞くので、これをベースにブログを書いたのですが、「社会保険の対象=将来の年金額が増える」について触れていなかったことに気づきました。

「当面の手取りが減る」という情報だけが先行するから、「手取りが減るなら社会保険には入りたくない!」と思ってしまうのは自然なこと。当面の手取りが減っても、将来もらえる額が増えるなら、長期的に見ればお得かもしれないですよね。

ただ、年金の計算って、めちゃくちゃメンドクサイ…。

2つのシミュレーションツールで試算

なんとか簡単に試算できる方法はなかろうか?ということで、公的機関のシミュレーションを2つ使って試算する方法を考えてみました。

①社会保険料の負担額の把握に「社会保険料かんたんシミュレーター」を利用
厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイト 社会保険料かんたんシミュレーター

こちらのシミュレーター、本来は会社側の負担額を計算するものなのですが、健康保険と厚生年金は会社と従業員本人が折半します。つまり、対象者が1人なら、会社の負担額≒本人負担額。
なので、「新たに対象となる人数」に1名、「対象者の平均給与月額」に個人の月給額を入力すれば、本人の社会保険料の年間負担額がざっくりわかります。

※実際は事業主が負担する額の方が多いので、個人の負担額はシミュレーターでの計算結果よりも若干低くなります。

②将来の年金額の把握に「公的年金シミュレーター(試験運用中)」を利用
公的年金シミュレーター(試験運用中)

このシミュレーターを使うのに用意するものは「ねんきん定期便」だけ。年金定期便がなくても、自分の記憶を手繰り寄せればシミュレーションは可能です。

まず自分の生年月日を入力します。ねんきん定期便が手元にある場合は、その情報を入力します。ねんきん定期便がない場合は、「将来の働き方・暮らし方」欄に、記憶を思い出しながら入力します。過去の情報が入力で来たら、ねんきん定期便がある人もない人も、60歳または65歳までのシミュレーションしたい働き方・暮らし方を入力すれば、自分がいくらの年金を受け取れるかが試算できます。

試算結果はこうなった!

今回は、以下の条件で試算しました。

<対象者>
・1982年1月1日生まれの年齢40歳
・20歳~40歳までパート・アルバイトで働き国民年金に加入
・現在働いている企業は従業員数が101人以上で、同じ企業で65歳まで働くとする
・年金の受け取りは65歳からとする
A.41歳から60歳まで月8万5千円の給与を得て、引き続き国民年金に加入する
B.41歳から64歳まで月10万円の給与を得て、厚生年金に加入する

結果はこうなりました。(※2022年11月16日時点でのシミュレーション)

  • 年間手取り額
  • 年間社会保険料負担額
  • 将来の年金額(年額)
  • A
  • 102万円
  • 0円
  • 78万円
  • B
  • 101.5万円
  • 18.5万円
  • 103万円

厚生年金に加入するBの方が若干手取りは下がりますが、将来もらえる年金額は25万円アップ!という結果になりました。年金は生涯受け取れることを考えると、今の手取りは増えないけれど、月1万5千円分多く働いて社会保険加入は悪くない選択なのかもしれません。

なお、このシミュレーションは非常に単純化しています。
実際には、個別の事情で様々な影響が出てきます。また、今回は単純なシミュレーションのため、税金については考慮していません。さらに、年金や税金に関する法律・ルールは変わることがあります。あくまでも、「自分のケースはどうなるのか?」を検討するツールとして、参考程度に留めておかれるのが無難と思います。

経営相談室 スタッフコンサルタント 高松 が担当しました。

高松 留美(たかまつ るみ)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 高松 留美(たかまつ るみ)のプロフィール

(2022年11月30日公開)

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