「お店を開いてがんばってきたが、思うように売上が上がらないので、今の店を閉めて、別の場所でやり直したい」という相談がときどきあります。
どんなに努力しても、立地が原因で成果が上がらないという場合、資金的に許されるのであれば、別の場所で店を開くという判断は正しいと思います。
しかし、よくよく話を聞き、お店を見せてもらうと、立地の問題というよりも、店舗経営の基本(提供サービスの魅力、お客様とのコミュニケーションなど)ができておらず、立地を変える前にまだまだ改善の余地があることがよくあります。
以前に相談に乗った居酒屋の事例を紹介しますと、店を訪問すると、外観からは何の店かよくわからない状態でした。
まず、何が店の「売り」であるのかを明確にし、誰が見てもすぐわかるように、「売り」である商品写真を大きなタペストリーにして店の外にかけました。
また、若い男性会社員をターゲットに、ボリュームのあるランチメニューを開発して新規顧客を開拓し、ランチ客を夜に誘導するようにしました。
さらに、オペレーションを効率化するためにメニューを絞り込み、またお客様にゆっくりと座ってもらうためにイスを減らしました。その結果、売上が増加し、今でもその場所で店を続けています。
なぜ、まだまだやれることがあるにもかかわらず、場所を変えてゼロからスタートしようとするのでしょうか?
大きな要因として、うまくいかない理由を、自分ではなく立地のせいにしてしまっていることが考えられます。
極めてシンプルな問題にもかかわらず、経営者自身が無意識に自己責任を回避するために問題を複雑化していく、といったことがよくあります。
そういう意味では、苦境に立った際に、ブレずに正しい努力を継続するためには、経営者は自分の心の弱さに真正面から向き合っていかなければならないのです。
経営相談室 スタッフコンサルタント 泉 仁史が担当しました。
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(2016年2月10日公開)
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