この原稿を令和3年12月6日に書いています。最近、とても悲しい出来事が起こりました・・・。
経営に必要な気持ちの二面性
映画「ウエストサイド物語」のリニューアル版封切りが、今月上旬の予定から来年2月に延期されたのです。「何を言っている!」とお感じになった方も多いと思いますが、私は、多感な学生時代(何年前かは申しませんが)に前作を観て、感動したことを思い出しました。ご了承ください。
御存じの方も多いと思いますが、「ウエストサイド物語」は、シェイクスピア作「ロミオとジュリエット」の現代版です。「ウエストサイド物語」はトニーとマリアが対立しあうグループの壁を越え、短くも儚い恋に落ちるという内容でした。「ロミオとジュリエット」では、二人が出会ってから一日という短い時間で二人の死により純愛が終わった、と記憶しています。
しかし、一日という短い期間だからこそ、熱愛の素晴らしさが視聴者の感動を呼んだと言えるのではないでしょうか?逆に二人が結ばれ、長い年月を描いた物語では、感動のシーンだけで劇や映画はできないと思います。例えば、生活費を中心とした経済的な問題などを乗り越える二人の協力、子どもができた場合、子どもの養育には二人の辛抱が必要で、長い時間をかけてこれらの問題を解決する必要があります。
魅力的な人に出会って恋に落ちる、といったことは誰にでもあります。しかし、出会った時の感動がいつまでも続かないことも事実です。
出会って恋に落ちた二人がめでたく結婚したとしましょう。そして結婚10年目、20年目・・・と記念日を迎えることができた、しかし、出会った頃の熱愛感情だけでは10年を超える結婚生活は続きません。
お互いに相手の嫌な部分も見えてきます。喧嘩をすることも一度や二度ではないでしょう。そして別れの危機を迎えたとしても、それを乗り越えて、例えば結婚30周年記念日を迎える。その原動力になるのは、一時の熱愛感情ではなく、相手を許し認める、そのような長い時間をかけて培った想いです。
このお互い許しあうという気持ちも深い愛情であり、これなくしては、長い人生を二人で歩き続けることはできません。
事業においても同じようなことが言えると思います。
特に創業時においては、ある意味、人生をかけて勝負する、というような激しく強い気持ちが必要です。事業計画書に記入する「経営理念」等はまさにこれにあたります。
しかし、事業にもさまざまなことが起こり、継続の危機に瀕することも一度や二度でないでしょう。この危機を乗り越えるために必要な要素は、創業時にもっていた激しく強い気持ちより、今後起こり得るであろう危機に備えるアクションを考えるという「慎重さ」です。
事業を継続する場合、「情熱」や「絶対成功する。」といった強い気持ちと同時に、当初の想定よりも事業がうまくいかなかった場合の代替案を作成しておく準備、その準備をする「慎重さ」が必要です。「情熱」と「慎重さ」の二面性、優れた経営者たるにはこの二面性を持つことが必要だと思います。
経営相談室 スタッフコンサルタント 森 が担当しました。
(2021年12月15日公開)
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