早いもので今年度も残り2か月足らずとなり、経営に携わる皆さまは年度末の追い込みや次年度の計画策定で多忙を極めているのではないでしょうか。
ただ、組織の持続的成長を左右する「人材定着」という観点では、この2月はとても重要な月となります。

早めに着手しましょう!!
4月に新入社員や中途採用者を迎える企業にとって、受け入れ態勢を整えるのは「3月では遅すぎる」のが実情です。せっかく苦労して採用した人材が早期に離職してしまうのを防ぐために、経営者がすぐに着手すべき準備について解説します。
まず、採用した人材が早期離職することの損失を正しく認識する必要があります。一般的に、1人の人材を採用・育成し、戦力化するまでにかかるコストは、求人広告費や紹介手数料などの「直接コスト」に加え、教育に割く既存社員の工数や管理職の面談時間といった「間接コスト」を含めると、数百万円にのぼることも珍しくありません。もし早期に離職してしまった場合、これらの投資は損失へと変わります。それどころか、既存社員のモチベーション低下や、残された業務のしわ寄せによる連鎖退職のリスクさえ孕んでいます。つまり、新しい人が「この会社を選んでよかった」と思える環境を2月中に設計することは、将来の損失を回避するためにとても重要な取り組みとなります。
2月中に具体的に着手すべきことの第一は、「教育担当者(メンター)の選定」です。現場で最も仕事ができるエース社員が、必ずしも最高の教育者であるとは限りません。新しい人の不安に寄り添い、適切なフィードバックができる「共感力」のある社員を任命し、教育にどう関わるかを明確にして依頼する必要があります。3月の繁忙期に入ってから「4月から新しい人を見ておいてくれ」と丸投げするのは、新しい人・既存社員双方にとって不幸な結果を招きます。第二に、「業務の言語化とマニュアルの整備」です。新しい人が最も不安を感じるのは、「何をすればいいか分からない」や「聞きにくい雰囲気がある」という状態です。
・「いつまでに、何ができるようになればいいか」というロードマップの可視化
・「誰に何を聞けばいいか」という相談ルートの明文化
これらの準備を2月中に済ませておくことで、新しい人は迷うことなく業務に馴染むことができ、心理的安全性が飛躍的に高まります。
採用から入社までの期間が空くこの時期、内定者は「本当にこの会社でやっていけるだろうか」という強い不安を抱えています。この「入社前ブルー」を放置すると、最悪の場合、入社直前の辞退にもつながりかねません。
そこで、2月中に「入社前フォローアップ」を戦略的に実施しましょう。
・歓迎の意思表示: 経営者自らが「あなたの入社を心待ちにしている」というメッセージを伝える。こうした「あなたを大切に思っている」というメッセージの積み重ねが、入社後の帰属意識を高める強固な土台となります。
・定期的なコミュニケーション: 社内報の送付や、チャットツールでの軽い近況報告を実施します。
・カジュアルな面談: 評価に関わらない「壁打ち」の機会を作り、入社後の不安をあらかじめ聞き取っておきます。
「人は宝」と多くの経営者が口にしますが、その宝を磨き、定着させるための仕組みづくりには、戦略的な「時間」の投資が必要です。現場が忙しくなる3月の前に、経営者がリーダーシップを発揮して受け入れ態勢を整えること。その一歩が、4月入社の新戦力を会社の未来を担う人材へと育てる第一歩となるはずです。
「経営相談室 スタッフコンサルタント 太田が担当しました
▼太田 信之(おおた のぶゆき)へのご相談(面談)
(2026年2月4日公開)
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