みなさん、こんにちは。
経営相談室の谷口です。
私は仕事柄、ビジネスプランコンテストの審査をしたり、ビジネスプランのブラッシュアップを行ったりしています。
コンテストの審査シートやビジネスプランのサマリーシートには、商品・サービスを通して、お客様にどのような価値を提供するのかを記入する欄がありますが、記入された内容を見ると抽象的であったり、他の事業者との違いがよくわからないケースがよくあります。
お客様の価値観や行動を理解できていますか?
例えば、カフェの提供価値に「おいしいコーヒーや軽食を提供し、お客様にリラックスした空間を提供する」とあったらどうでしょうか?
一見、良さそうに見えますが、多くのカフェに当てはまる内容であり、それだけでは、そのカフェを選ぶ理由にはなりません。
提供価値に具体性がない一因として、顧客像を明確にイメージできていないことが挙げられます。
さきほどのカフェの例では、相談者に「ターゲットはどんなお客さんですか?」と聞いても、「店舗周辺の住民、出勤前のサラリーマン、ママ友集団」など漠然とした回答が返ってくることがあります。
具体的な顧客イメージができていないため、顧客ニーズを十分に分析できておらず、提供価値もぼやけてしまっているのでしょう。
その対策として、まずターゲットを明確にする必要があります。
そこで役立つのがペルソナの設定です。
ペルソナとは自社の商品・サービスに最も価値を感じてくれる理想的な人物像をさします。
「30代男性」などのように年齢や性別でセグメントされたターゲット像と違い、具体的で名前があり、たった一人の人物像にまで落とし込みます。
ペルソナを設定するメリットとして以下の点が挙げられます。
・顧客視点で顧客の行動やニーズを分析でき、商品・サービスの開発、改良に役立つ
・メンバー間で顧客のイメージを共有化できるため方向性がぶれない
・提供価値、キャッチコピー、プロモーション、タッチポイントなどが明確になる
※タッチポイント:自社と顧客の接点(HP、SNS、対面営業など)
ではペルソナをどのように設定すればよいでしょうか?
その3つの手順をご説明します。
①目的に応じてペルソナのベースを決定
例えば、新規顧客獲得が目的であれば問題意識や悩みを抱えている人物像、リピート率の向上が目的であれば商品・サービスを利用し始めた人物像、自社のファンやアンバサダーを増やす目的であればヘビーユーザーをベースにします。
②属性、行動、価値観などの設定
①をベースに名前、性別、住所、家族構成、職業、年収、価値観、趣味嗜好、ライフスタイル、悩み、タッチポイント、自社・競合商品の認知度・利用経験、イメージ写真などの項目を作成し、それぞれ埋めていきます。
不明な項目があった場合はペルソナに近い人物にインタビューやアンケートなどで調査します。
③ペルソナが実在するかチェック
自社の商品・サービスの既存顧客、もしくは潜在顧客の中にペルソナに近い人物が実際に存在するか、メンバー間でディスカッション、営業や現場担当者に確認、などでチェックします。
設定したペルソナが現実の世界にほとんど存在しない場合は、マーケットがないことをさします。
ペルソナに完全一致していなくても、属性や価値観の近いセグメントが一定数必要です。
以上3つの手順でペルソナを設定します。
BtoBの場合は、個人のペルソナだけでなく、会社の業種や規模など、会社に関する情報も加えてください。
子ども向け商品の場合は、利用する子どもと決定権を持つ親を含めたペルソナが必要です。
さきほどのカフェに当てはめてみると、設定したペルソナが例えば以下のような人物であればどのような提供価値が考えられるでしょうか?
【ペルソナ】
氏名:産創館太郎
性別:男性
年齢:70歳
趣味:散歩
家族構成:一人暮らし
価値観:多少値段が高くても、ゆったりできることを求める
一日の行動:毎朝、健康のために散歩をしており、それが終わったらカフェで朝食を食べながら新聞を読むのが日課
【提供価値】
昔の喫茶店を彷彿させる内装で高齢者が利用しやすい
客席間が広く座り心地のいいソファで居心地の良さ満点
店員が常連の顔を覚えていて、「いつもの」の一言で注文可能
客席から注文し、席にまで運んでくれるので快適
長居していても気まずさを感じない
上記のような提供価値が挙げられ、全てペルソナを明確に意識したものとなっています。
カフェであれば朝・昼・夕に分けて3つのペルソナを作成してもいいかもしれません。
ちなみに上記のペルソナと提供価値は、私が朝のコメダ珈琲をイメージして記載しました。
結論として、ペルソナを設定することで、提供価値が明確になります。
提供価値が明確になれば、それをプロモーションでターゲットに訴求してください。
ペルソナに効果的な内容であれば、ペルソナの価値観に近いセグメントの需要も取り込むことができます。
さらに、ビジネスプランコンテストの審査シートやビジネスプランのサマリーシートにおいても説得力のある資料となるでしょう。
経営相談室 スタッフコンサルタント 谷口 が担当しました。
谷口 睦(たにぐち むつみ)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
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(2021年9月15日公開)
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