第338回 効果的に使って経営にプラスを!有給休暇の意義を知ろう|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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なかのひと
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効果的に使って経営にプラスを!有給休暇の意義を知ろう

  • 有給休暇は労働者の権利
  • 有給休暇の目的は労働者のリフレッシュ
  • 有給休暇を効果的に使ってよいスパイラルを生みだそう

有給休暇は労働者の権利

みなさん、こんにちは。経営相談室の高松です。
想定外の早い梅雨入りに、まだまだ続く新型コロナウイルス感染症の影響。気になることが多い一方で、ワクチンの接種が始まり、今度こそコロナが収束してほしい!と願うばかりです。
コロナが収束したら思い切って旅行に行きたい!という方も多いのではないのでしょうか。そんな時にうれしい制度が「有給休暇(有休)」です。
というわけで、今回は有休について書いてみました。

予定が空いていると、つい埋めたくなる…

予定が空いていると、つい埋めたくなる…

改めて、まず「有給休暇」とはなんぞや?という話から。
有給休暇とは、正式には「年次有給休暇」という制度で、労働基準法(39条)に明記されている労働者の権利です。厚生労働省のHPにあるFAQによると、「年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、『有給』で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のこと」とされています。有休は権利なので、当然それに対応する義務があり、有休を付与される労働者の条件として、
1.半年以上継続して雇われている
2.全労働日の8割以上を出勤している

の2つが規定されています。つまり「一定期間以上、ちゃんと労働力を提供した」という義務を果たした労働者が得られる権利なわけです。正社員、アルバイトなどの雇用区分は関係ありません。

一方で、経営者の皆さんには「労働者」ではないので、「有給休暇」はありません。経営者は誰かに「働け!」と命じられているのではなく、自分で働く日を選択して、働き方をコントロールすることができる立場にあると言えます。だから、経営者には有給休暇はありません。そもそも、経営者には労働時間という概念もありません。極端なことを言えば、24時間365日働いたとしても、法的には問題ありません(※心身の健康や人間関係に問題が起こりますので、絶対にお勧めしません)。

有給休暇の目的は労働者のリフレッシュ

労働者の権利である有給休暇。ではその目的は何でしょうか?
有休と聞くと、「病院に行くなどやむを得ない事情があるときに使うもの」と思っている方もおられるかもしれません。実際に、「病院に行く」「子どもの学校行事に参加する」といった用事に有休を使う、というのはよくある話。こういった使い方の利便性を高めるために、半日有休や時間単位有休などの制度を設けている会社もあります。

■意外と知らない「半日年休の取扱い」

ですが、有休の本来の目的は、「仕事を離れて従業員の心身のリフレッシュを図り、仕事に対して前向きに取り組める環境を作ること」です。そのため、有休の取得は本来1日単位を原則としていますし、時間単位有休の導入には制限もあります。日常の仕事に追われていると、新しい発想も生まれにくくなります。有休を使って、趣味に打ち込む、スポーツで汗を流す、おいしいものを食べてゆったりとした時間を楽しむ。そしてリフレッシュした状態で再び仕事に取り組む。こういったメリハリをつけたほうが、仕事の効率も上がりそうですよね。

2019年4月からは「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が事業主に義務付けられたこともあり、最近は「有休をとらないことの方がマイナス」というメッセージがより強く打ち出されているように思います。有休の申請時に、業務に支障がないことを確認し、同僚に遠慮し上司のご機嫌をうかがいながら、「休んで申し訳ございません」という雰囲気を出しつつ、そっと申請書を提出…なんていうのは昔の話。しっかり休んで、仕事もプライベートも充実させていこう!というのが、これからの働き方ではないでしょうか。

有給休暇を効果的に使ってよいスパイラルを生みだそう

とはいえ、「リフレッシュといっても、他の方がお仕事をしているのに自分だけ休んで申し訳ない」「用事があるわけでもないのに、なんだか休みにくい」など、ややネガティブなイメージから、有休取得をためらわれる方もおられるかもしれません。実際に、「令和2年度『仕事と生活の調和』の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書」「年次有給休暇の取得にためらいを感じるか?」という質問に対しては、「ためらいを感じる」が13.3%、「ややためらいを感じる」が39.4%となっています。
<令和2年度「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書>
https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category4/20210423_1.pdf

経営者の方とお話をしていると、「給与を払ってるのに休まれるなんて、たまったもんじゃない!」なんてお声を聴くこともあります。特に、少人数で経営されている企業では、従業員一人一人の担う役割が大きく、一人が休むと仕事に影響する、というのも事実です。上記調査でも、「有休取得にためらいを感じる理由(複数回答)」として「みんなに迷惑が掛かると感じるから(66.8%)」「職場の雰囲気で取得しづらいから(24.6)%」「上司がいい顔をしないから(12.9%)」などといった、職場の雰囲気を忖度したものが挙げられています。

本来、有休は職場環境をよくするものであるはず。「制度があるから仕方なく与えている」なんて雰囲気では、どんなにいい制度であっても職場環境はよくなりません。むしろ「有休を取得することで職場の雰囲気が悪化」なんてことになりかねません。「制度の目的を知ったうえで、安心して使える」という雰囲気ができてこそ、職場環境もよくなるし、有休の本来の目的も果たせるのではないでしょうか。
有休は労働者にとって権利であるだけでなく、労働者のリフレッシュが経営のプラスになるなら、経営者にとってもメリットのあるもの。何より職場の雰囲気はいいに越したことはないですよね。有給休暇を効果的に使って、労働者にも経営者にもメリットのある制度・運用をめざしていきましょう!

経営相談室 スタッフコンサルタント 高松 が担当しました。

高松 留美(たかまつ るみ)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 高松 留美(たかまつ るみ)のプロフィール

(2021年6月9日公開)

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