第491回 20年ぶりの新紙幣発行の影響|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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20年ぶりの新紙幣発行の影響

  • 20年ぶりの新紙幣発行がもたらす経済効果
  • 新紙幣発行に伴う店舗機器の課題と対策
  • システム導入で行う新紙幣対策

20年ぶりの新紙幣発行がもたらす経済効果

先週7月3日から新紙幣が導入されました。
今回は、20年ぶりの新紙幣発行で1万円札に渋沢 栄一、5千円札に津田 梅子、1千円札に北里 柴三郎が描かれ、偽造対策としてホログラムなどの新技術が採用されました。

新紙幣導入は変革のチャンス

新紙幣導入は変革のチャンス

新貨幣発行の経済効果は1.6兆円といわれており、その影響は広範囲に及びます。主に、金融機関のATM、バスの運賃支払、自動釣銭機、飲食店などの発券機・食券機など、現金を取り扱う企業は対応が必須となっています。
個人的には普段行くお店のほとんどがキャッシュレスに対応しているので、現金を持ち歩くことが少なくなったのですが、世間一般では現金の流通量はあまり減っていないようです。

新紙幣発行に伴う店舗機器の課題と対策

新紙幣が発行されることで、紙幣読み取り機構がある機械の入れ替えや、改修が必要となります。混乱を避け、事前に入れ替えなどをしておきたいものですが、入れ替えには100万円以上するものもあり追加の負担は悩ましい課題です。
「中小企業省力化投資補助金(※1)」といった補助金もあるので、これから対策を考える場合には確認しておきましょう。

費用負担を避けるために機械の入れ替えを見送る場合、店舗オペレーションの変更が発生するので注意が必要です。自動釣銭機を廃止することで、精算処理が煩雑となり、お金の数え間違いやお釣り受け渡しミスなどが発生しかねません。また発券機をやめることで、注文受けなどの処理が増えることと、注文ミスなどが起こることが予想されます。特に少ないスタッフで運営している店舗では、業務負担の影響が顕著に出ますので、機器の入替によるコスト負担と比較し検討してください。

システム導入で行う新紙幣対策

今後、紙幣の流通量が減ることを見越してキャッシュレス端末の導入を検討している事例も見られます。訪日外国人観光客が増えている飲食店などで、新紙幣の発行がきっかけとなりキャッシュレスへの切り替えが進みました。訪日外国人観光客にとっては両替の必要がないので評判も良いようです。

まったく違うシステムで代替する事例もあります。
発券機の代わりに、セルフオーダーシステムを使うことで注文処理を軽減し、注文ミスを減らすことができます。以前は専用の機械が必要だったセルフオーダーシステムも、顧客自身のスマホから簡単に注文ができるアプリが登場しています。顧客のスマホを使ったセルフオーダーは、QRコードを使用して店舗のメニューを表示し、直接注文・決済できるアプリです。多くはWEBアプリであり、顧客はスマホにアプリをダウンロードする必要がないため、簡単に始められるという利点があります。とある居酒屋では、注文の度に大声でスタッが呼ばれることがなくなり、店が静かになったという話もあります。
また、決済システムと連動することで、釣銭のミスや現金の取り扱いが減るため、スタッフの負担を軽減することが可能です。

これらは顧客への影響や店舗オペレーションの変更を伴うので、事前のテストやトレーニングなど準備は必要ですが、利便性を向上させ、顧客の印象を大きく変えることも期待されます。クラウドシステムになっているものも多く手軽に使えるのもありがたいですね。

以上、新紙幣発行に合わせての対応をまとめてみました。新紙幣の対応方法は、個々の企業の状況に応じてさまざまです。今後、紙幣流通量は減少することも予想されていますので、外部環境の変化にあわせて、時代に即したツールを使って柔軟に対応し、顧客満足度を高めていく工夫が求められます。

経営相談室 スタッフコンサルタント 大西が担当しました。


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(※1)独立行政法人中小企業基盤整備機構 「中小企業省力化投資補助金」
https://shoryokuka.smrj.go.jp

▼大西 森(おおにし しげる)へのご相談(面談)

(2024年7月10日公開)

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