経営相談室の大西です。
新型コロナウイルス感染症による行動制限も解除され、全国津々浦々でマラソン大会が開催されるようになりました。ただし、どの大会も参加費が高くなってしまい気軽にエントリーしにくくなりました。
価格改定への準備をしていますか?
飲食店も原材料価格、水道光熱費、人件費の高騰などで、値上げ(価格改定)は当たり前になりました。経営者の値上げに対する意識も変化し、今まで自店だけ値上げはできないと様子見をしていた方も、最近では他店もどうせ値上げをするだろうと考えるようになりました。株式会社ぐるなびの調査(※1【ぐるなびリサーチ部】外食の値上げに関する調査 2022年6月15日)によると、顧客も値上げについては、「仕方がない」が55%、「値上げは当然」が18%と、7割以上の人が理解を示しています。
しかし、最近の値上げは、“短期間での再値上げ”の可能性があるもので、ここ数年ではなかったケースです。値上げはやらざるを得ませんが、さすがに何度も値上げすれば“客離れ”が心配です。
これまでと大きくかわりませんが、価格改定の方法を①~③に整理しました。ポイントは、環境変化に対応する為に、数値分析を徹底することと、判断の拠り所となる指標を取り入れることです。
①現状分析:
売上高、原価率、客数、客単価の変化を確認し、売上減少、利益率低下の理由を分析します。原価率の高騰以外にも、周辺環境の変化(競合店の出店)、商品・接客サービスの質の低下などが要因として考えられます。最近では、値上げをせず原価削減をしたことで、メニューの質が低下し“客離れ”が生じていることも考えられます。良かれと思って実施したことで、満足度の低下を招いているケースです。
②値上げ方法の決定と指標の設定:
値上げ方法は、「仕入金額の上昇に応じた値上げ」、「全メニュー見直し」、「一部メニュー見直し」などです。①の現状分析を踏まえ検討します。
その際、いくら価格を上げるかといった判断の拠り所としてFLコスト比率(※2)を使います。前出のぐるなびの調査でも、37%の回答者が「値上げをしても質や量を変えないで欲しい」と質や量を求める傾向がるので、指標を設定し乖離しないようコントロールしましょう。
(※2)FLコスト比率:売上高に占める材料費「F(=Food)」と人件費「L(=Labor)」の割合です。((F(材料費)+L(人件費))/売上高で計算し、60%が目安です。他にも、家賃「R(=Rent)」を加えた、FLRコスト比率「((F(材料費)+L(人件費)+R(家賃))/売上高)といったものもあり、こちらの目安は70%です。
③事前告知の方法の整理と実施:
告知文(ポスター)、店内POP(レジ前、卓上)、メニュー、SNS、ホームページなど準備します。事前告知はなるべく早くが原則ですが、“いつ”やるかといった正解はありません。値上げを決めたら誠意ある説明を心掛け、なるべく早く告知していきます。
経営環境は刻々と変わりますので、“短期間での再値上げ”はありえます。こうした変化の中で顧客離れを防ぐには、接客で顧客とコミュニケーションをとり、SNSを通じてお店の魅力を伝えていくといった基本的なことも求められます。数値による現状分析に合わせて、しっかりできているか点検が必要ですね。
経営相談室 スタッフコンサルタント 大西が担当しました。
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(2023年7月12日公開)
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