久しぶりのNHK朝ドラネタです。知らない方のためにドラマ「まれ」を一言で解説すると、主人公まれがパティシエを目指す物語です。
有名パティシエのまれの祖母が、修行中のまれに言ったセリフで、なかなかいいこと言うなあと感じたものがあります。
「全ての人を喜ばせる事はできないわ。だからこそ 自分がどういうお菓子を目指すのか それをちゃんと決めなきゃいけない。迷いながらでいいのよ。でもいつかきっとどういうパティシエになるのか決める時が来る。」
このセリフのどのあたりがいいのかというと、「全ての人を喜ばせる事はできない」というところです。
このセリフは、まれの作ったケーキが、まれの目指す正統な高級フランス菓子としては未熟であるが、庶民的で食べやすいという良さがあり、庶民派のお客様にはよく売れている、という背景があって出てきたものです。
正統な高級フランス菓子を好む人と、庶民的な味を好む人を同時に喜ばせることはできません。どちらかを選ばなければならないのです。
創業時に起業家が悩む問題のひとつに「ターゲットを絞る」ということがあります。自分の商品・サービスは、あんな人にもこんな人にも喜ばれるはず、ということで、ターゲットを絞れない人が多いのです。
ターゲットを絞るというのは、ターゲット以外を捨てて販売相手を意識的に減らすことであり、起業家にとっては販売のチャンスを逃すように感じられるものです。
しかしそれでもあえてターゲットを絞らないと、高級路線でもなく庶民派でもない、中途半端で訴求力の弱いケーキになってしまい、結局は誰にも売れない、ということになってしまうのです。世の中にケーキ屋はあふれており、それぞれがしのぎを削って戦っています。
そんな中で、どんな人に向けて、どんなケーキを作るのか、自分でちゃんと決めなきゃいけないのです。つまり、ターゲットを絞るには、ターゲット以外は捨てる勇気が必要なのです。
とはいえ慌てることはありません。まれの祖母がいうように、起業家は試行錯誤し、迷いながら自分の商品・サービスのターゲットを決めていくものであり、前向きにしぶとくがんばっていると、いつかきっと決める時が来るのですから。
経営相談室 スタッフコンサルタント 泉 仁史が担当しました。
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(2015年7月29日公開)
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