「創業に際して取引契約をどうしたらよいのか」という相談を受けることがあります。
相談していて感じるのは、契約に慣れていないため、契約について誤解しているのではないか、ということです。
まず、契約書は自由に作ることができる(契約自由の原則)ので、別に形式や中身などに決まりがある訳ではなく、当事者が納得しているのであればそれでよい、というのが原則です。
さらにいうと、民法では口頭でも契約することができるので、当事者が「口頭で十分」というのであれば、それはそれで別によいのです。実際、信頼関係のある当事者同志では、契約書などなくても特に問題なくお互いにやるべきことを遂行しています。
ただし、何かトラブルが発生した際に、口頭では「言った、言わない」ということになりかねず、証明するものがないため、文書化しておいた方がよい、ということになります。
それではどう契約すればよいのか、というと、相手との信頼関係などにより契約書の中身が変わってきます。たとえば、相手が全く初めての取引先で信頼関係が全くなく、しかも高額製品を購入する場合、みなさんは全額前金払いの契約書を作成するでしょうか?
みなさんが「それでよい」と納得しているのであれば別によいのですが、相手がお金を持ち逃げした場合、どうするのでしょうか?手間も金もかかる裁判をするのでしょうか?
たとえ裁判に勝っても、相手がお金を持っていなければ、現実的にはお金は返ってこず、泣き寝入りになることがよくあります。
つまり、契約書を作っても相手はそのとおりに義務を果たす保証などなく、たとえ裁判に勝ったとしても、裁判所が相手の代わりにお金を返してくれることなどないのです。
要するに、契約書は「相手をどこまで信じることができるのか」という経営判断の結果に他ならないのです。
したがって、信頼関係のない相手に対しては、事前に取引先の信用調査や企業訪問を行って相手の素性を確かめたり、「半分は前金、半分は製品引渡し時に支払う」という契約交渉を行ったりして、「ここまでの約束であれば、最悪、約束を破られても大丈夫」と納得して契約することが重要なのです。
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▼泉 仁史( いずみ ひとし )のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 泉 仁史( いずみ ひとし )のプロフィール
(2016年5月11日公開)
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