先日、切削加工を行っている会社で、社長が自ら制作した「機動戦士ガンダム」のモビルスーツの模型を拝見させていただきました。あくまでも趣味で作ったとのことでしたが、マシニングセンターを駆使し、こだわりが感じられるもので、かなりの時間をかけたと楽し気に話されていました。
技能継承は継続して取り組みましょう
加工技術をPRするために、こうした取り組みをする会社は展示会でもお見かけします。会社の技術力だけでなく、担当者の趣味が垣間見えて会話が弾むので、営業面でも効果が期待できます。
私が訪問した会社では、技能継承と自ら技能を磨くため、社員全員が難易度の高い製作課題に取り組んでいると伺いました。社員自ら取り組んでいるので、技能向上とモチベーションアップにもつながっているようです。
技能承継は、熟練の技術者が持っている専門的な技能や知識を後継者に引き継ぐことを指します。
暗黙知の部分が多く難しいものですが、事業を継続するのに必要な取り組みです。
最近では、①高齢化による退職者の増加、②人材の流動化、③技術の急速な進化、④競争力の強化などの観点から、重要性が高まっています。
技能継承にITを活用する事例もあります。
撮影用カメラ、タブレットなどが登場し、記録が楽になったことが要因です。
多くは、「学習素材のデジタル化」、「e-ラーニング活用」といったもので、情報共有の効率化、教育効果の向上、履歴管理の改善などのメリットがあります。
学習素材のデジタル化では、熟練技術者が作業する様子を撮影し、映像を見ながら解説を音声入力し、技術ポイントを書き込むものです。専用のソフトもありますが、スマホなどでもカメラの機能や使いやすいアプリなども使われています。
e-ラーニング活用は、主に若手従業員の基礎知識の向上と教育内容の平準化のために使われています。技能を引き継ぐ従業員と熟練技術者との知識レベルに差を埋めるものです。先の学習素材のデジタル化から一歩進み、学習の主体性、現場での気づきを与えるよう内容にも工夫が加えられたのが特徴です。
最近では、外国人人材を採用するケースもありますので、デジタル化をしておくと翻訳して使うことができるので便利です。
さらにクラウドベースの技能管理システムなどもあるので、複数拠点などがある場合には、お勧めです。
技能継承の問題は、かつて「2007年問題」、「2012年問題」といわれたものですが、ものづくりの現場では継続している課題です。現場任せでは進みにくいので、会社として継続的に実施していくことが基本です。
冒頭に紹介した企業では、技能を積極的に身につけるために自分で決めたテーマに取り組む時間が設けられていました。これも会社を長い間存続させるために何が必要か社長自ら考えたことが発端となっています。
技能のドキュメント化、マンツーマントレーニングなど取り組みは多岐にわたりますが、長期的な視点にたって人材育成とともにどのように技能を継承するか検討が必要ですね。
経営相談室 スタッフコンサルタント 大西 が担当しました。
大西 森(おおにし しげる)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 大西 森(おおにし しげる)のプロフィール
(2023年3月15日公開)
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