第355回 コロナ禍の生活様式が革新を阻む?|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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なかのひと
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コロナ禍の生活様式が革新を阻む?

  • よそ者との交流がイノベーションを生む
  • コロナ禍での新しい生活様式の功罪
  • 直接出会うことの重要性

よそ者との交流がイノベーションを生む

皆さんこんにちは。経営相談室の田口光春です。

昨年末(2020.12.28)に日本経済新聞に経営者が読むべき一冊としてある本が紹介されました。「革新は「よそ者」とともに」というキャッチに興味をそそられ、その記事だけでなく、源もひも解きました。その本とは、戸堂康之著「なぜ『よそ者』とつながることが最強なのか」(プレジデント社)です。

よそ者との出会いがイノベーションを生む

よそ者との出会いがイノベーションを生む

この本の中で、「複数の国をまたぐ研究から生まれた特許は、国内だけで研究されたものより質がいい」「成長力を国内での取引状況でみると、同じ都道府県内で取引する企業より、都道府県をまたいで取引する企業の方が優位である」といったことを、学者で大学教授である著者がデータ分析・実証研究で明らかにしています。

結論では、「よそ者」との交流でイノベーションが生まれ、組織が活性化すると表現されています。

その一方で、新型コロナウイルスの蔓延と、中米間の経済分断(デカップリング)が深まり、自前主義、保護主義が進行しているという実態を明らかにし、それが与える影響についても言及しています。さらにグローバル化の功罪についても問題提起しています。


コロナ禍での新しい生活様式の功罪

コロナ禍で新しい生活様式、新しい言葉が広まりました。テレワーク、リモートワーク、オンライン会議などです。コロナが終息した後のポストコロナの時代もこうした生活様式・働き方が有効で続くのではともいわれています。

確かに新しい生活・仕事の様式は、通勤時間の節約や、労働環境を考えると、ポストコロナの時代でも有効な方法と思われます。しかし新しい手段(リモート、オンライン)でも人と人とは繋がりますが、それは以前からの関係性があったからこそ成り立つものです。

リモート、オンラインで初対面の人と出会うことはあり得ますが、そこに参加するには何らかの関係性があってのことで、全く関係ない人(よそ者)と偶然出会うことはないでしょう。


直接出会うことの重要性

この書籍で述べられていること、危惧されていることからすると、新しい生活様式などはイノベーションを生むには決して有効な方法とは思われません。それは「よそ者」と出会う機会に恵まれないと思われるからです。

シリコンバレーがなぜIT産業の集積地になったのでしょうか。また、東京・六本木にベンチャー企業が多く集まったのはなぜでしょうか。その理由は多々あるでしょうが、ひとつ言われていることは経営者同士が気楽に会えるということです。ランチ(昼食)だけでなくブレックファースト(朝食)を取りながら顔を付き合わせて気楽に情報交換ができる環境が企業を成長させているといわれます。

またアメリカのベンチャーキャピタル(ベンチャービジネスに資金を供給するとともに、いろいろな経営支援を行う会社・機関)が対象とする企業の条件は、車で2時間でいける範囲にあることだそうです。それはベンチャービジネスを支援する肝は、何時でも気楽に経営者と会い意見交換ができる距離感が大事であるということの表れです。

社員の皆様もそうですが、経営を担う方々はなおさらいろんな方と出会い、知見を広めることができる日々が訪れることを願うばかりです。

経営相談室 スタッフコンサルタント 田口 が担当しました。

田口 光春(たぐち みつはる)のプロフィールはこちらからご覧いただけます。
→ 田口 光春(たぐち みつはる)のプロフィール

(2021年10月6日公開)

大阪産業創造館 経営相談室

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