経営相談室の田口です。
最近「働き方改革」、「副業」、「フリーランス」といったワードが目につくようになりました。このブログでも第454回、第459回、第468回で副業やフリーランスの人材を積極的に活用することの意味と優位性、具体的な取り組むための方策を案内しています。一般的に副業、フリーランスを論ずるときには、こうした人材をどのように活用すべきであるかという受入れ企業側を対象としています。
新しい働き方にどのように向き合うべきか
そうした中で、「アルムナイ」という言葉に出会い、「アリス」のことを思い出しました。
「アルムナイ」とは卒業生や同窓生と言う意味ですが、企業人事では離職者や退職者を指します。近年その元社員を即戦力として中途採用するケースが増えているとのことで、この「アルムナイ」が注目されています。
そして「アリス」は昨年(2023年)10月に逝去された谷村新司さんが所属したバンドのことです。アリスは1972年にデビューし、1981年に1回目の活動を休止しています。この活動休止について、谷村さんは「アリスは母艦でそれぞれがそこから飛び立ち、またそこに戻ってくることができる」という思いをもっていらしたそうです。結局アリスは3度の活動中止と再開をしています。この二つは副業、フリーランスを生み出す企業側の行動を表現しているのと同じことだと思います。
前出の活動休止に関する話に接したのは、前職時代のまだ若かりしころでした。アリスの話を聞いて、平社員にもかかわらず人事担当に、「会社もアリスのように退職者が帰ってこられるような母艦であるべきだ」、「いや、それ以上に中途退職を積極的に推奨し、スキルアップして帰れる場所があるという安心感がひいては会社の発展に寄与するのでは」と説いていました。今考えるとまさに若気の至りでした。
また、20年ほど前に今でいう「リスキリング」を先取りして、海外の大学院で学ぶことを選択した後輩がいました。この時も「休職扱いにし、大学院修了後に再入社する道も残しておくべきだ」という声を挙げましたが、これも採用されることはありませんでした。
しかし、振り返ってみるとこれらはまんざら的外れではなかったと思います。
終身雇用制度の否定と人材の流動化、副業、フリーランスなど雇用をめぐる環境はめまぐるしく変化しています。これらは企業経営にとって一見ネガティブに思われますが、これをポジティブにとらえることで企業にもよい結果が出るのではないでしょうか。
退職希望者がでたら、再度の入社を拒まない旨を伝えて、気持ち良く送りだしてはいかがでしょうか。それは新たな働き方に対する経営側からの積極的なアプローチです。副業やフリーランスを選択する社員を後押しすることで、本業に良い効果を引き出せるような仕組みを構築することも考えてみるのはどうでしょうか。その取り組みが新たな人材の採用にも魅力ある企業として受け入れられることに繋がっていくと確信しています。
最近、経営相談室へ副業での開業相談が増えてきています。新しい働き方が確実に浸透してきていると感じられます。だからこそ経営者はそうした新しい流れに積極的に乗るべきではないでしょうか。受動的ではなく能動的に。
経営相談室 コンサルタント 田口が担当しました。
▼田口 光春(たぐち みつはる)へのご相談(面談)
(2024年6月5日公開)
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