先日、知り合いの中小企業の社長から、海外企業との秘密保持契約について相談を受けました。
秘密保持契約は、特に海外取引では名刺代わりみたいなもので、サインしなければ商談がスタートできません。したがって、立場の強い取引先から秘密保持契約書が出てきた場合、私の経験では、一般的な内容であれば、契約交渉をすることもなく、そのままサインすることが多いように思います。相談者も、発注者になる海外企業から言われるままに既にサインをしていましたが、契約内容に不安が残る、ということで相談にお越しになりました。
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不安なところを確認すると、どういう情報をどこまで秘密保持しなければならないのか、曖昧でよくわからないということでした。
秘密保持契約には、通常、秘密保持の対象となる秘密情報が定義されています。しかし、秘密情報の定義が具体性に欠け、範囲が明確でない場合があります。また、自社のみならず、外注先などにも同様に秘密保持を求めることが契約書に記載されていることもよくあり、外注先に対してどのように秘密保持を担保させるのか、という問題もあります。さらに、万が一何かあった場合、損害賠償などのリスクもつきまといます。
上記のような不安は、もっともなことであり、実は秘密保持契約に特有のことではありません。通常どんな契約書でも、なんらかの曖昧さや損害賠償を訴えられるリスクが残るものです。また、契約書は建前の世界でもあり、契約書に記載されている事項でも、実際には何らアクションを起こさずとも特に問題にならないこともあります。
したがって、どこまできちんと契約書を作ったり、契約書に書いてあることをまともに対応したりするのかは、唯一絶対の答えがあるわけではなく、あくまで会社として判断することになります。つまり、契約内容、契約を履行するかどうかの判断を下すのは経営者や事業責任者であり、法務の専門家は契約作成や判断のお手伝いしかできません。したがって、経営者や事業責任者の不安感は、最終決定者としての責任感の裏返しでもあるのです。
なお、相談者は私に相談したことで、一人で悩みを抱え込む不安感からは多少救われたようでした。
契約書に関するご相談がありましたら、経営相談室に登録している弁護士などの法律の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
経営相談室 スタッフコンサルタント 泉仁史が担当しました。
▼泉 仁史(いずみ ひとし)へのご相談(面談)
(2024年7月24日公開)
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