経営相談室の田口です。
銀行の店舗数自体が減っていることと、店舗に設置されているATM(現金自動預払機)が極端に少なくなっていることに最近気が付きました。私が利用するのは、大阪産業創造館のある堺筋本町界隈の比較的大型店舗で、ATMはほぼ半減したものの混み具合は以前と変わらず足りている状態のようです。これはもちろんコロナ禍で在宅勤務が一般化したこともあるかもしれませんが、キャッシュレス決済の普及の影響も大きいと思われます。
新たな信用を担う会社の出現
一般的にキャッシュ(貨幣)には鋳貨と紙幣があります。
日本の場合、鋳貨は財務省の管轄下にある独立行政法人造幣局が鋳造し、「日本国」と刻印して発行し、紙幣は中央銀行の日本銀行が印刷し発行しています。しかし鋳貨の価値はそこに刻印された金額には程遠いものでしかありませんし(1円玉は別です)、紙幣に至っては言わずもがなです。
兌換制度ではない現代で貨幣が貨幣として存在できるのは、貨幣を発行している国とその国の中央銀行への信頼だけです。
キャッスレス決済としてまず普及したのがクレジットカードです。
そしてキャッシュレス決済をより身近にしたのが交通系と流通系の前払い方式の電子マネーです。これによりキャッシュレス決済の普及に弾みがつきました。
次に登場したのがデビットカード。支払いと同時に銀行口座から代金が引き落される仕組みですが、普及は今一つといった感じです。
そして昨今、広く普及してきたのが〇〇PAYなどのコード読み取り型決済システムです。スマホの機能拡大もあって普及に弾みがついたようですが、技術的なことは本稿担当者の理解の及ぶ範囲外です。
前払い方式やコード読み取り型の決済を扱っているは銀行以外の会社で、それを利用する個人や代金を受け取る側は、その会社を信頼して利用しているのです。そこには貨幣が貨幣でありえる国や中央銀行が担っていた信頼と同じものがあるのです。つまり預け入れた(チャージした)資金が安全に保管され確実に支払われることへの信頼があるから利用が増えているのです。
代金としてキャッシュレス決済で受け取る側は貨幣を扱う必要がないことや、発行会社から代金の受け取り側へ直接貨幣の受け渡しをせず、銀行口座への振り込みで決済が確実に完了することから、安全面でのメリットも評価されています。
もう一つ仮想通貨も忘れてはなりませんが、各国の金融当局もその評価は曖昧で、決済手段として受け入れられるにはもう少し時間が必要でしょう。
さらに日本独特の決済手段である手形、そして小切手の新規発行は停止されるようで、ゆくゆくは制度そのものが全廃される方向にあり、取引決済の変化のスピードは凄まじいものがあります。
こうした新しい決済手段を事業にどのように、どのタイミングで取り入れるのかは、経営者の決断次第で、ビジネスの行方を左右しかねません。
ちなみに東京にいる孫に会うための旅行では、新幹線チケットはネット予約のクレジット決済、土産は交通系電子マネーで、弁当は〇〇PAYで支払い、貨幣は使用しませんでした。
ゆくゆくは孫に渡すお年玉も貨幣ではなく、キャッシュレス決済の送金機能で済ませることになるかもしれませんね。
経営相談室 スタッフコンサルタント 田口が担当しました。
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(2023年11月22日公開)
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