みなさん、こんにちは、経営相談室の谷口です。

自社でシステムを作りませんか?
多くの中小企業において、ITツールの導入は重要な経営課題です。しかし、「高価なシステムを入れたが、現場でうまく活用されていない」というご相談は少なくありません。
以前、ある企業で顧客管理システムの導入をご支援した際、同様の課題に直面しました。そのシステムは、プログラミング知識が不要な「ノーコード」ツールを活用したもので、安価かつ柔軟に自社の業務に合わせた設計ができるのが利点です。
「せっかくなら」と現場の要望をヒアリングし、商談履歴や日報作成など多くの機能を盛り込んだ多機能なシステムが完成し、開発側としては、あらゆる業務をカバーできる素晴らしいものができたと自負していました。
しかし、実際に現場で使ってもらうと、「画面のボタンが多すぎて分からない」「操作が複雑」と予想外の反応が返ってきました。良かれと思って追加した多機能さが、かえって現場の負担となり、「使いづらい」という印象を与えてしまったのです。
現場からの率直な意見を受け、導入方針を180度転換しました。それは、「足し算」ではなく「引き算」から始めるアプローチです。
具体的には重要でない機能を非表示にして、「顧客管理」と「案件の進捗管理」といった最小限の機能だけを残しました。画面はシンプルになり、誰でも直感的に操作できる設計に変更したのです。
すると、「これなら使える」「簡単で分かりやすい」と現場の反応は徐々に変わっていきました。まずはシステムへの抵抗感をなくし、日常業務で当たり前に使ってもらうこと。この最初のステップが、定着への重要な鍵でした。
高機能なシステムも、使われなければ意味がありません。最低限の機能で運用を始め、現場が「使うこと」に慣れるための期間を設けたことが、スムーズな導入につながりました。
シンプルなシステムを日々使っていると、今度は現場から「前回の訪問日も登録したい」「この項目は選択式にしてほしい」といった具体的な要望が自然と生まれてくるようになりました。
それらの要望に応じ、非表示にしていた機能を一つずつ解放したところ、基本操作に慣れていたため混乱は起きず、自分たちの声でシステムが便利になることを実感し、より積極的な活用につながりました。
この経験から得られた教訓は、ノーコードツールのように、専門家でなくても柔軟に改修できるものは、段階的にシステムを改善するやり方と非常に相性が良いと言えます。
業務の変化や現場の習熟度に合わせて、必要なタイミングですぐに改善といったスピード感と柔軟性こそ、変化の激しい時代を乗り越える中小企業にとって、大きな武器となるはずです。
「システム導入」は難しく考えがちですが、大切なのは現場が主役となり、ストレスなく使いこなせることです。導入を検討中の方、あるいは既存システムにお悩みの方は、ぜひ経営相談室にご相談ください。
経営相談室 スタッフコンサルタント 谷口が担当しました。
▼谷口 睦(たにぐち むつみ)へのご相談(面談)
(2025年11月5日公開)
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