毎年、夏と冬に開催しているコミックマーケット(通称:コミケ)は、東京ビッグサイトで行われ各日約12万人以上が訪れています。今年の冬の開催で50周年を迎えるこの世界最大規模の同人誌即売会は、同人誌以外にも、グッズの販売やコスプレなどが行われ、多くのアニメファンに長年愛されてきました。
新商品を育成しよう
近年はメディアでも取り上げられることが多く、夏場は多くの来場者が炎天下の中で入場を待つ様子が取り上げられています。その行列で今年初めて、「日傘使用可」が正式にアナウンスされたこともSNSで話題となりました。
ちょっとしたルールの変更でしたが、長年継続してきたイベントに於いて「身の安全」を守るという価値がこれまでのマナーといった慣習を変えるほど社会的な意識変化の転換点であったと言えます。
今回は、社会的な意識変化の転換点に合わせて、「日傘男子」の事例を参考に、新商品育成のヒントを探っていきます。
ここ数年の猛暑の影響もあり、日傘を持つ男性を見る機会が年々増えています。日傘男子という言葉は2010年代から登場し、2014年にはフリー素材サイトに「日傘をもつ男性」のイラストが加わりましたが、男性用日傘の種類も少なく習慣がなかったことから、普及が進んでいませんでした。
日傘のように「良い商品だとわかっていても、なかなか普及しない」商品は、他にもあります。こうした商品は、機能や価格以外に心理的・社会的障壁という「見えない壁」に阻まれることがあります。私自身、日傘を持つことで荷物が増えると感じるので、気持ちはよくわかります。
こうした意識の変化が必要な商品に対しては大規模なプロモーションが行われることもありますが、中小企業では、小回りが利く強みを活かし、商品のライフサイクルに合わせた取り組みが求められます。
1.「どう楽しむか」を提案する
利用者が少なく市場がまだ認知されていない段階では、まず利用シーンを具体的にすることで、商品に新しい価値を与え、楽しみ方を提案しましょう。男性用日傘のケースでは、まず色などデザイン面を工夫し、ファッションアイテムの一つとして初期ユーザーを開拓しました。同時に、話題に敏感なターゲットを想定し、プレスリリースなどでアプローチすることも有効です。
2.ニッチな市場をめざす
「特殊なニーズへの対応」「技術的なニーズ」「カスタマイズ」「数量限定」など、ニッチな領域でトップをめざしましょう。男性用日傘のケースでは、軽量性など機能面でこだわりの多い商品が出ています。商品の認知が進めば、類似商品もでてくることが予想されるので、製品改良などによる差別化を継続し、ブランド力を強化することが鍵となります。
3.情報発信を工夫する
地道な情報発信でターゲットとコミュニケーションをとるのは他の商品と同様です。ただし、男性用日傘は、体験してもらわなければその効果が伝わりにくい商品だったこともあり、代理体験として利用者の声を取材し情報提供をしていました。
「見えない壁」がある商品が普及するには時間がかかります。次の世代を支える新商品へと成長することを期待し、長期的な視点で社会的な意識変化を観察しながら、できる範囲で対策をすすめていきたいですね。
経営相談室 スタッフコンサルタント 大西が担当しました。
▼大西 森(おおにし しげる)へのご相談(面談)
(2025年9月17日公開)
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