第554回 米国の関税政策と対応策|経営相談室のなかのひと|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

中小企業の経営者・起業家の皆様を支援する機関。大阪産業創造館(サンソウカン)

米国の関税政策と対応策

  • 世界の貿易秩序について
  • 日立製作所の取り組み
  • 経営者に求められるもの

世界の貿易秩序について

米国の関税政策の大幅な変更により、世界中が大きな影響を受けています。

経営者の眼力・歴史観が問われています

経営者の眼力・歴史観が問われています

1930年代の不況後、世界経済のブロック化が進み、各国は保護貿易政策を設けました。しかし、このことが、第二次世界大戦の一因となったという反省から、1948年GATT(関税及び貿易に関する一般協定)発効、1995年WTO(世界貿易機関)設立を通じて、世界は関税引下げ・貿易制限廃止を進めてきました。第二次世界大戦後80年目の今、世界の貿易秩序、さらに安全保障体制は、歴史的な転換点に差しかかっていると言えます。

日立製作所の取り組み

自由貿易体制を前提に、最も安く生産できるようにサプライチェーンを構築し、最も儲かるように販売するグローバル戦略を推進してきた企業は、今、戦略の大きな見直しをせざるを得ない状況に陥っています。
しかし一方で、こうした変化に対応できるように、以前から独自の体制を構築する努力をしている企業が存在します。日立製作所は「自立分散型グローバル経営」という手法を10年前から模索しています。自立分散とは、部品・製品調達を、国・地域の境界を越えずに完結させるという意味で、地産地消のイメージです。したがって、どこかの国・地域にトラブルが発生しても、他の国・地域は影響を受けずに事業を続けることができます。これは日立製作所の鉄道運行システム関連事業で得た知恵がもとになっているとのことです。例えばどこかの駅でトラブルが発生した際、その悪影響が全線に波及せず、それ以外の区間では運行を継続できるというイメージです。

経営者に求められるもの

モノづくりにおけるサプライチェーンの変更には時間がかかります。しかし、米国の関税政策は、米国の政権が代われば再び元の自由貿易へと戻るというような類のものではなく、今後、長期間にわたって世界経済の保護主義化が進んでいく可能性があります。こうした世界秩序の変化をどう解釈し、どう手を打っていくのか、世界の大きな潮流をとらえる経営者の眼力や歴史観が問われているように思います。

経営相談室 スタッフコンサルタント 泉が担当しました。

▼泉 仁史(いずみ ひとし)へのご相談(面談)

(2025年10月1日公開)

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