まもなくシルバーウイークが始まります。5連休になるのは2015年ぶりで、多くの方が旅行に出かけることが予想されています。

記憶に残るサービスを考えよう
個人的には11年前の連休に何をしていたのか全く記憶にないですが、連休の旅を素晴らしい思い出にするには、ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)が唱えた「ピーク・エンドの法則」が役に立ちそうです。今回は、シルバーウイークの旅行にもマーケティングにも使えるテーマとして「ピーク・エンドの法則」を取り上げてみました。
「ピーク・エンドの法則」とは、人間が過去の経験などを評価するとき、かかった時間や全体の平均的な楽しさではなく、「最も感情が高ぶった瞬間(ピーク)」と「一連の体験が終わる最後の瞬間(エンド)」の2つの情報だけで印象を決定づけるという心理傾向です。
どんなに素晴らしい観光地(ピーク)を楽しんだとしても、締めくくり(エンド)が「長い渋滞」であれば、脳は「今回の旅=疲れた旅」と判定してしまいます。例えば、SNSで話題のスポットを満喫しても、帰りに大渋滞でぐったりしてしまえば、旅全体の記憶が「渋滞で疲れた思い出」に上書きされてしまうのです。
この法則を旅に応用するなら、「旅先で予定を詰め込みすぎず、一番の目的(ピーク)を達成したら、渋滞が始まる前にサッと引き上げてくる」のが正解です。タイムパフォーマンス(タイパ)を重視して「ギリギリまで話題のスポットを堪能したい」という行動パターンとは逆を行くかもしれませんが、実は「旅全体の満足度を最大化して記憶に残す」という意味では、これ以上ないタイパ施策と言えます。
「ピーク・エンドの法則」は最高の瞬間を作り、最終工程をすっきり終わらせることで、顧客体験を最大化できるという考え方なので、ビジネスシーンでも日常的に見かけます。
例えばスーパーマーケットです。お店に入った瞬間、最初に迎えるのは「鮮やかな旬の果物」や「瑞々しい季節のお花」のコーナーです。鮮やかな色彩と甘く爽やかな香りで五感を刺激し、一気に買い物のモチベーションを引き上げる(ピークの仕込み)。そして売場の主通路では、お値打ち品などのマグネット陳列で購買意欲のクライマックスを作るなど工夫があります。
またエンドとなる「精算(レジ)」では、感動やサプライズではなく、「間違いのない正確さ」と「待ち時間の短縮」に細心の注意が払われています。セルフレジや自動精算機、決済手段の追加など、まさに顧客のストレスをゼロにするための工夫です。
こうした取り組みにより、店舗は「買い物のワクワク感(ピーク)」を演出しつつ、「精算のイライラ(エンド)」を低減し、顧客に「また来たい良いお店だった」という記憶を残しているのです。
「ピーク」と「エンド」の設計で大事なのは、顧客視点です。まず「ピーク」は、自社商品やサービスの“強み”を活かした取り組みで設計します。機能の充実、新規のキャンペーンなど感情に訴えかける施策を考えて作りこみます。
一方で、「エンド」は、顧客との接点で最終ポイントとなるのは、どこになるか考えて設計します。例えば、SaaSモデルなら解約の手続き、サービス業であれば帰り際の声掛けなどです。
テーマパークで長時間並んでも、アトラクション(ピーク)が楽しく、テーマパークを離れるときにはキャストたちが笑顔で手を振って見送ってくれると、また来たいと思ってしまうものです。
「ピーク」と「エンド」を巧みに利用して、顧客体験を考え直すと、リピートにつながる施策のヒントがみつかるかもしれません。
経営相談室 スタッフコンサルタント 大西が担当しました。
▼大西 森(おおにし しげる)へのご相談(面談)
(2026年9月16日公開)
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