第99話「創業者をリスペクトした後継者の対応」|事例に学ぶ 事業承継|【公的機関】事業承継なんでも相談所|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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事例に学ぶ 事業承継
事業承継相談員が見聞きした事業承継にまつわる「うそのような本当にあった出来事」をシリーズで紹介していきます。
ただし、みなさまに問題点をわかりやすく考えていただくため、少し脚色しています。その点はご容赦ください。
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第99話「創業者をリスペクトした後継者の対応」

事業承継についていろいろな相談を受けますが、2つとして同じ内容のものはありません。
その中で後継者からの相談で比較的共通して多いのが、
「社長がなかなか経営を譲ってくれないから、何とかなりませんか。」
「最近の社長の言動に疑問が出てきており、今のまま社長が会社を続けていくことに不安でどうしたらいいか。」
といった内容です。

実はこの問いに対しての回答はありません。
中小企業の場合は、社長を交代するか否かを決めることができるのは社長以外にいないからです。
親しい人が「そろそろ考えたら」といったアドバイスは有効かもしれませんが、それが奏功するか否かはわかりません。
こうしたお悩みの参考になりそうな事例をご紹介します。

その会社と出会った頃は、創業者が社長をされており、後継者として長男が専務をされていました。お会いするのはいつも後継者の専務でした。
銀行や取引先との交渉も専務が一手に引き受けており、新製品開発も含め社内のすべての部門は専務が中心となっていました。
ある時、なぜそうした体制をとっているかを直接専務に聞ける機会が訪れました。
答えは、「専務の方が気楽でしょう」と煙に巻くような回答をニヤリとされました。
その回答には納得することはできませんよね、誰もが。
しかし、それ以上深入りすることはせず、その場は納得した振りをして、本音はいずれ確認することを宿題としたのです。

創業者で専務の父である社長は体調が優れず、社長業を行うには厳しい状態にありました。
なぜ社長を交代しなかったのでしょうか。
社長からは度々、交代の話が出ていたようです。
しばらくして、その理由を知ることになりました。
社長の交代提案を受けなかったのは、息子である専務が父親の気持ちを慮ったからでした。
自分が創業した会社はいつまでも見守っていたいのが創業者の本音です。
それを息子として思ひ量って社長交代の申し出を断り続けていたのです。

上場企業のような大企業では、社長が日常業務を行わないということは、株主を始め多くのステークホルダーから非難を受けます。
しかし、中小企業では、社長が認めた代わりに実務を担う人材がいれば、そうした問題は起きません。
ましてそれが後継者として指名された社長の実子であればなおのことです。
この専務は代表取締役ではなかったため、対外的の公式文書には父親の社長名と実印を使いましたが、特に問題は起きることはありませんでした。
余談ですが、実印を使う場面は年に数回しかなかったとのこと。
安定した経営を続けておられたからこそです。
もちろん、専務の行動については微細なことまで社長に報告することは怠りませんでした。

こうした体制は私が知りえてから10年以上、実質的には20年以上続きました。
そして社長がお亡くなりになり、満を持して専務が社長に就任されました。
しかし、実態は何の変化もなく、取引先など外部の関係先も、社員たち内部の人たちも違和感なく受け入れられました。

後継者で実子の専務が、父親であり創業社長の気持ちを汲んだ対応に、いたく感心したものです。
形式論ではなく実態を受け入れ、その中でどのようにすることが会社にとって一番の選択なのかを考えたうえでの専務の行動でした。

(2022年4月26日更新)

担当:事業承継相談員 田口 光春(タグチ ミツハル)

「社長を交代するか否かの決定権は現職社長が持つ」
「実質的職務と名前の不一致も、問題になることは少ないのでは」
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