2015年6月に自動車メーカー「スズキ」の社長交代のニュースが伝わりました。
感想としては「ようやくか」です。
前社長・鈴木修氏は85歳で社長に就任したのが1978年。
37年が経過して、56歳の長男に引き継がれます。
37年間、ずっと社長職に就いていたわけではありません。
途中8年間、二人が社内昇格で社長となられたのですが、お二人とも健康上の理由で退任されています。
さらに、後継者の本命と目されていた官僚出身の娘婿に至っては、50歳代前半で逝去されています。
そうした背景を考えると、鈴木前社長が長期政権となったのは本人の意志と反したものであったかもしれません。
しかし、社長職は譲りましたが、会長兼最高執行責任者(CEO)の職に留まるとのことですので、親子の役割分担がどのようになるのか、事業承継を支援する立場としては興味が尽きません。
このニュースを読みますと、中小企業の事業承継にも参考になることがありました。
まずは前社長の「ワンマンや独裁の限界」と言う言葉です。
「スズキという企業規模となると」という条件付きの発言です。
ここには、現在までワンマンであり独裁で経営をしてきたことを認めており、それを肯定もされています。
しかし、その体制も事業規模が拡大するに従い限界が訪れることを、自ら認められたわけです。
ワンマン経営は決してマイナスではなく、特に企業規模の小さなうちは迅速な意思決定ができますので、最適な経営体制であると思っています。
しかし、いずれ限界が訪れることを常に認識しておかなければなりません。
スズキのようにグローバル企業になってもそれが継続されたことは、驚愕なこと、異常なことでしょう。
いつまでもワンマン体制を続けますと、トップの器が企業の器を決定してしまいます。
そうした事例はかなりの数を見てきました。
どこで脱却し、組織で運営する体制にするかが企業の成長のポイントとなるのです。
次は後継者である新社長に関する記事と発言です。
後継者の本命候補として入社し、14年目に取締役に就任されたそうです。
取締役就任早々は「会長、それは違いますよ」と言って、役員会で親である前社長に食ってかかっていたとか。
しかし、経験を積むうちに気負いも薄らいで、視野の広い調整役として信頼を得られたとあります。
そしてインタビューでは「30年後(『86歳』筆者注釈)に比較される経営者になりたい。」と発言されています。
さらに「ただ、30年間社長をするのはスズキにとってよくない」とも。
前の言動とインタビューからは親である前社長への闘争心、子どもの親に対する本音がよく表れています。
前任者は後継者にとって挑戦していく対象であり、越えなければならない課題であるということが如実に表れた記事だったと思います。
名物経営者のひとつの時代の終わりを告げた(とはいえ、CEOとして残留されますが。)ともいえ、今後のスズキがどのような軌跡を歩むのか大変興味のあるところです。
また新社長のプレッシャーは相当なものでしょうが、親を超えた名経営者に育ってほしいと思うのはスズキの社員だけではないでしょう。
(記事内容等は2015.7.1付日本経済新聞朝刊を参考にしています。)
担当:田口 光春(タグチ ミツハル)