第61話「兄弟円満に承継・経営していくコツとは?」|事例に学ぶ 事業承継|【公的機関】事業承継プロジェクト|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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事例に学ぶ 事業承継
事業承継相談員が見聞きした事業承継にまつわる「うそのような本当にあった出来事」をシリーズで紹介していきます。
ただし、みなさまに問題点をわかりやすく考えていただくため、少し脚色しています。その点はご容赦ください。
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第61話「兄弟円満に承継・経営していくコツとは?」

兄弟平等で事業を引き継ぐことの難しさは多くの企業で散見される事例です。
本編でも様々な事例をご紹介してきました。
厳しい状況に陥った事例 ⇒第10話第17話
うまく避けるための方策を講じた事例 ⇒第11話第33話

今回は、兄弟仲良く事業に関わり、まもなく創業一世紀を迎えようとする企業の事例を見ていきます。

とある地域の地場産業で現経営者の祖父が創業し、父が現在の主力事業である電子部品製造業で確たる地位を築き上げてきました。
現在は、その子供3人が仲良く経営に関与し、東京証券取引所一部上場企業にも匹敵する規模まで成長した会社です。
また、日本のみならず海外3か国に現地法人を持つまでに至っています。

その会社にご縁をいただいた頃、一般的に兄弟による経営、それも事業を引き継いだ兄弟によるものはうまくいかない、という事例を多く見てきていましたので、大変興味を持ったのです。
そこで当時の社長(長男。現在は三男が社長に就任。)に円満な兄弟経営の秘訣をお聞きしたところ、次のような話をしてくれました。

社長を引き継ぐ際、当時の社長(父)から兄弟全員に、次のようなことを言われたそうです。

1.配偶者を経営に参加させない。
(父が事業を引き継いだときはまだまだ家業の域を出ておらず、奥様の手を借りていました。一定の規模に達した時に会社から退いてもらいましたが、以来、非常勤の役員にもされなかったそうです。)

2.会社に関する情報は絶えず兄弟間で共有できるよう、情報交換の場を頻繁にもつこと。

3.会社に関わらせていない配偶者など家族には1年に一度は必ず会社の業況を報告し、現状を知ってもらうこと。
(一般的に中小企業の場合、株主は同族関係者で占められることが多く、株主総会は形式的なのが実態です。しかし、同社では父が奥様を会社から退かせた後は必ず株主総会を開き、会社の現況をきめ細かく報告してこられたそうです。それは株主総会というより業況報告会のようであったとのことでした。)

筆者は事業承継の相談をお受けしたときに、複数の子供を社内に入れることに反対することが多いです。
兄弟仲良くても、他人・配偶者がつくことで微妙な関係が生まれることも多く、そうしたリスクの可能性をお伝えしています。
しかし、この会社の事例のように、事業承継時はもちろん、その後も事業に関わる関係者全員の心構えを一致させておければ、円満な経営に繋げることもできます。

息のあった兄弟経営で会社はますます成長していますが、兄弟の子供たちをどのような形で経営に参加させるか、という次世代に向けた課題もあります。
しかし、同社ではきっとよい解決策を見つけ出し、それを共有し、さらなる躍進が期待できると信じています。

(2019年2月26日更新)

担当:田口 光春(タグチ ミツハル)

「企業のステージによって、たとえ配偶者でも経営に参加させない決断も必要」
「情報交換は常にして共有することが兄弟経営の肝」

難しいと思っても、まずはご相談ください!

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