竹中工務店、サントリー、ヤンマーと言えば関西を代表する企業ですが、3社に共通するのは未上場、つまり証券取引所に株式を上場していないビッグカンパニーです。
3社ともオーナー家が株式の多くを保有して経営権を握っています。
経営トップは、竹中工務店が2013年に創業400年で初めて同族外の社長が、サントリーも2014年に創業100年で初めての創業家外の社長が誕生しました。
この3社には事業規模では及ばないものの、中堅大手で経営トップに非同族が就任し、同族脱皮した会社があります。
ただ、やむを得ずなったといった方がいいかもしれませんが。
創業40年、社長は創業家一族の2代目で働き盛り、事業承継を考えるにはまだまだ時間がある状況でした。
しかし病で突然に急逝されてしまいました。
社長には子どもがなく、同族関係者も社内にいませんでした。
突然の出来事で家族、社内は混乱しました。
そこで社長夫人が出された結論は、会社経営を社内の人に任せることでした。
2代目を就任時から支えてきた専務に新社長になるよう依頼されたのです。
夫人は役員ではなかったのであくまでお願いベースでした。
そのほかの条件はなく、同族から会社役員を置くことも希望されませんでした。
この事件が起きて四半世紀が過ぎ、非同族の社長も2人目となっています。
業績と言えば、当時の事業を主力としながらも新たな事業にも挑戦し、3倍以上の伸長を見せています。
ではなぜこのような円滑な事業承継が可能だったのでしょうか?
まず挙げなければならないのは創業家の理解です。
昔財閥と言われた企業で見られた「君臨すれども統治せず」の姿勢が貫かれているように思われます。
その後も創業家から役員に就任する人は出ていません。
株式も従業員持株会や取引関係先などへ譲渡され、税務上も非同族企業となっています。
次に非同族化した時点の社内と運営体制です。
2代目はワンマン経営者と言っても過言でない経営ぶりでしたが、一定の規模を超えたあたりからワンマンでは経営できないと悟られたのでしょう。
組織として運営する体制を作り、それを支える人材を育てられていました。
その結果、急な社長交代、非同族社長の誕生でも経営的には混乱することはなかったのです。
中小企業経営でワンマンという言葉は良い意味で使われることは少ないと思います。
私は中小企業でワンマン経営は決して悪いことではなく、むしろプラスに評価しています。
しかし、一定規模以上になるとワンマン経営も限界がきます。
そのときに経営者の考え(経営理念)を社内で共有し、組織として運営する体制に切り替えておけば、いざというときの対処法の選択肢が広がるのです。
それをまさにこの会社が教えてくれています。
担当:田口 光春(タグチ ミツハル)