第100話(最終回)「事業承継を知見して思うこと」|事例に学ぶ 事業承継|【公的機関】事業承継プロジェクト|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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事例に学ぶ 事業承継
事業承継相談員が見聞きした事業承継にまつわる「うそのような本当にあった出来事」をシリーズで紹介していきます。
ただし、みなさまに問題点をわかりやすく考えていただくため、少し脚色しています。その点はご容赦ください。
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第100話(最終回)「事業承継を知見して思うこと」

これまで筆者の40年近くにわたる中小企業との関わりの中で見聞きした事業承継の事例から、100社近くの皆様が興味を持たれるであろうと思うケースをご紹介してきました。
私自身が実際に見聞きした事業承継の事例は、ご紹介したケースの数倍にも至ります。
ただ、その多くは王道の親子承継を円滑にされており、特筆してみなさまにお伝えしたい事業承継の勘ドコロは、本シリーズで十分にお伝えできたのではないかと思っています。
最後に、長年、事業承継に関わってきたことで感じていることを少し紹介したいと思います。

まず初めに、事業承継の都市伝説「相続税で事業が継続できなくなる(つまりは廃業する)」を聞くことがありますが、本当でしょうか。
自社株の評価が高くて相続税が過大になることは、その会社の事業が極めて順調である証です。
そこに高い税金が課せられることになっても、銀行などが納税資金の支援してくれるはずです。
また税金の延納制度もあり、「納税できない」という事態に陥った企業に私は遭遇したことがありません
もちろん「納税資金を借りて返済に苦労した」「延納を選択し完納まで苦しかった」という話は聞いています。
納税額が下がることに越したことはありませんが、適時、株価や必要税額を把握しておくことと、その準備をしておくことが重要になります。

そうした新たな負債を抱えたくない場合は、M&A・会社の売却といった選択も今は考えられます。
税金に困るということは、多くの場合、事業が順調ということです。
その事業を引き継ぎたいと思う人(会社)を見つけることは、さほど難しくない時代になってきています。

次に廃業が増えている問題です。
廃業を選択しなければならない根本の問題は、後継者がいないからでしょうか。
私はその事業に魅力がないから、子供を含め引き受け手が見つからないことが原因だと思っています。
行っている事業が魅力的で、そのことや想いが伝わっていれば、子供なり第三者(役員・従業者や他企業など)が後継者に名乗りを上げるでしょう。
経営者からも話をしやすくなります。
ですから、現在の経営者の最大の使命は、事業を魅力あるものにすることとも言えます。

ただ、残念なことに、第7話のように、自社の魅力を社長自身気が付いておらず、他人から低い評価しか得られない場合は多くあります。
その意味では、経済産業省が推奨する知的資産経営報告書の作成などにより、会社の価値を見える化することも、事業承継の準備として効果的と言えます。
魅力ある事業が終わることは、日本経済の将来にとっても大きな痛手です。
継続してきた企業には、必ずその理由=魅力や価値が存在しますし、そこから新たな事業が生まれることもあります。
事業承継においては、事業の魅力をしっかり伝えることも重要です。

また、厳しい意見かもしれませんが、魅力のない事業が廃業することは仕方のないことも思います。
やはり時代の流れとともに、その役割を終えるタイミングがくることは避けられない事実です。
会社として存続するために新たな事業を模索するか、会社・事業をたたむかを決断することもまた、経営者の重大な役割です。

最後に、銀行借入に関しての個人保証問題です。
確かに個人保証はあるよりないほうが事業承継はたやすくなるでしょう。
とはいえ、個人保証が事業承継の重要なネック事項でしょうか。
事業が順調で、経営者個人と会社の関係がクリアなものであれば、銀行も個人保証を外すことに抵抗はないでしょう。
たとえ個人保証があっても、将来に問題ない事業ならば、後継者も保証行為を行うことに躊躇しないと思います(説明はしっかり必要ですが)。
銀行が保証解除に抵抗する、後継者が保証することにリスクに感じる、これらの根本原因は事業運営そのものの不安、将来性に期待が持てないことなのです。

こうしたことを総合すると、当館のような行政の事業承継支援サービスでは、魅力ある事業に変貌する手助けすることが大きな役割であり、会社の真の実力を見つけてあげることが本意だと思っています。
今後もその姿勢で、円滑な事業承継ができるよう支援していきます。

(2022年5月24日更新)

担当:田口 光春(タグチ ミツハル)

「相続税や個人保証が事業承継のネックとなるのはほんとの話?」
「魅力ある事業ならば事業承継の課題の多くは解決する」

後継者選びでお困りの方はご相談ください。

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