第3話「遺言は財産分配を記すだけではありません」|事例に学ぶ 事業承継|【公的機関】事業承継プロジェクト|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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事例に学ぶ 事業承継
事業承継相談員が見聞きした事業承継にまつわる「うそのような本当にあった出来事」をシリーズで紹介していきます。
ただし、みなさまに問題点をわかりやすく考えていただくため、少し脚色しています。その点はご容赦ください。
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第3話「遺言は財産分配を記すだけではありません」

四半世紀以上前に講演で聞いた話です。
講師は50代半ばの創業オーナー経営者。
テーマは「私の事業承継対策」でした。

この社長の言葉でまず驚かされたのは、
「毎年正月に遺言状を書き直している」ということでした。
50代にしてですよ。

そして、その内容にも驚きました。

財産の相続についてだけでなく、
「今年私が死んだときの経営体制、社長は誰にするか?それが5年後なら、10年後なら、20年後なら・・・」

ということを書いているとのことでした。

なぜなら、今の状況と5年後、10年後の状況は違うと認識していたからです。

後継者は息子さんを予定されていましたが、その当時はまだ学生。
事業の顧客には大手企業も多く、未経験者を後継者にする訳にはいかなかったのです。

そこで「今年なら専務の誰々に、5年後は常務の誰々、10年後は部長の、20年後には息子を」と、その時ごとに年齢的にも経験的にも任せられる人を考え、指名されているとのことでした。

これを毎年書き直すのは、状況は刻々と変化するからなのです。

悪い状況としては、予定していた役員や社員が亡くなったり、退職したりすること、
よいと思っていた人よりもっと有能な人が見つかった、なんてことが起こりうるからです。

ですから毎年書き直す必要があるとのことでした。

その遺言は、幸いかな利用されることはありませんでした。

自分の口で息子さんに社長交代を告げることができ、会長の務めも果たし円満な経営者人生を終えられました。

会社も隆々と継続しているのはもちろんのことです。

担当:田口 光春(タグチ ミツハル)

遺言書は相続だけでなく、後々の経営体制を提示
状況は刻々と変化、遺言書も変化に対応した書き直しを

引き際も良さも、経営者としての大切な能力です。

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