第68話「M&Aは『思い立ったが吉日』」|事例に学ぶ 事業承継|【公的機関】事業承継なんでも相談所|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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事例に学ぶ 事業承継
事業承継相談員が見聞きした事業承継にまつわる「うそのような本当にあった出来事」をシリーズで紹介していきます。
ただし、みなさまに問題点をわかりやすく考えていただくため、少し脚色しています。その点はご容赦ください。
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第68話「M&Aは『思い立ったが吉日』」

今回は、もうすぐ創業一世紀に近づこうとしていた会社のM&Aが絡んだ事業承継の事例をご紹介します。

現社長の父親が個人創業で始めた金属部品加工がスタートでした。
30歳で創業し、70歳で長男に社長を譲り、80歳で黄泉の国に旅たたれて早40年が過ぎようとしています。
創業者は事業を始めたときは大変苦労をされましたが、晩年はよき後継者にも恵まれ、幸せな人生であったかと思います。

創業者には長女・長男・次男の3人子供がいました。
後継者には、当時では当然のこととして長男が指名されました。
創業者が長年、社長の座にあったこともあり、長男にも早々に引退の時期が訪れました。
しかし、長男には子供がいませんでした。
そこで、次男が後継者となり3代目社長となりました。

しかしながら、この次男も間もなくして引退を考えるような歳となりました。
ところが、長男から突然の指名で社長になったため、次男の子供たち全員が後継者と自覚しておらず、承継を固辞したのです。
長女の家族も同じようなものでした。

このような背景があり、3代目社長はぼんやりと第三者承継、M&Aを考えるようになりました。
廃業という選択は社員を不幸にするだけでなく、創業者の思いも断ち切ってしまうからです。
とはいえ、社長の年齢も当時60歳代であったこともあり、まだ時間的余裕があると判断されたのか、積極的に動こうとはしていませんでした。

そんな折に、取引していた銀行から耳寄りな話が舞い込みました。
当社のことを外形的に知っており、初代の創業者についても尊敬の眼差しで見ていたと言う一族が経営する会社が興味を示したのです。
ところが大きな障壁が会社にありました。

まず、社長自身がM&Aについて考えを纏められていませんでした。
M&Aを行うにあたって、
①なぜそれを行うのか
②行うとしたら何を要望するか、譲れないものはなにか(たとえば社員全員の雇用継続はもちろん、事業、社名の継続など)
この2点は絶対に考えておく必要があります。また、
③希望する売却代金も答えられる状態にしておく
そうした準備がなかったのです。

さらに問題となったのが株主構成です。
創業者の優しい心意気が形となっていたのか、三姉弟の持ち株比率がほぼ等分でした。
その中で2代目社長の創業者長男はこのM&A話に異を唱えたのです。

その結果、社長の方針が固まっていないことに加え、株主が纏まらないということで相手が交渉のテーブルから降りてしまいました。
その深層には社長がまだ60歳代で、あと10年くらいは社長業をしたい、報酬を得たいという気持ちがあったのかもしれません。

それから10年近くが経ちましたが、まだ3代目社長が経営を行っています。
事業承継の方向性が見えないばかりか、業績も芳しくなく、M&Aに名乗りを上げる相手の可能性もかなり低くなり、事業承継に手詰まり感が漂っているのが実情です。

事業承継でM&Aも選択肢の一つと考える場合、どのような態度で臨むか常日頃考えをまとめておくことが重要です。
何のためにM&Aを行うか、相手にも求めるものは何かなどを。
その結果、具体的な話が出たときに迅速に交渉テーブルに着き話をスムーズに進めることが可能となるのです。
急がないと思っても、交渉にテーブルに着くことが先ず第一歩で、条件が合わなければ速やかに撤退すればいいのです。

M&Aは会社が売買対象でありますから、普通の商品と同じように売りに行けば叩かれ、買いに行けば吹っかけられます。
ですので「いつかは」と思っていると、タイミングを逃しかねません。
まさに「思い立ったが吉日」といえるのではないでしょうか。

(2019年9月24日更新)

担当:事業承継相談員 田口 光春(タグチ ミツハル)

「M&Aの条件は常日頃考えておくこと」
「M&Aの条件が合わなければ速やかに撤退すればいい」
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