第18話「時間をかけて非同族企業に脱皮」|事例に学ぶ 事業承継|【公的機関】事業承継プロジェクト|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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事例に学ぶ 事業承継
事業承継相談員が見聞きした事業承継にまつわる「うそのような本当にあった出来事」をシリーズで紹介していきます。
ただし、みなさまに問題点をわかりやすく考えていただくため、少し脚色しています。その点はご容赦ください。
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第18話「時間をかけて非同族企業に脱皮」

ある老舗企業の歩んだ道です。
創業者は起業家精神にあふれ、一代で海外まで展開する事業に育て上げました。

社長には事業運営に関して特段悩みはありませんでしたが、唯一、後継者、事業承継が頭の痛い問題でした。

お子さんは男女一人づつありましたが、二人とも将来を嘱望された芸術家の卵で会社経営にはまったく興味なし。
奥様も芸術を始めとして多趣味で、同じく経営には興味なし。
社長は悩みました。

今ならM&Aという方法もありますが、30年以上前のその当時は想定外のものでした。
また、株式上場という手段もありましたが、こちらも上場基準、証券取引所の審査が今よりまして厳しく、やすやすできる話ではありません。

そこで創業者が出した結論は社員への承継でした。
それを行うにあたり家族会議を繰り返し行いました。
創業者の思いを伝え、今後承継でどのような手順を踏んでいくかを家族に理解してもらうために。
ついで主だった幹部社員にもその思いを繰り返し説明しました。

その手順とは、

  1. 創業者はできる限り経営者・社長として第一線で経営に責任を持つ。
  2. その任に堪えられなくなった時は、最も適任と判断する役員か社員に社長を譲るが、経営権(株式)は引き続き創業者が保有する。
  3. 創業者が逝去した後は、株式は相続人がいったん相続し、相続人の代表が非常勤の役員としてボードメンバーに加わるが、代表者等経営実権は握らない。
  4. 株式については、時間をかけて役員、社員に譲るが、特定の人に偏らないようにするとともに、譲渡株価もできるだけを安くすることを相続人は事前に了承する。
  5. 譲り受けた役員、社員はそれぞれ持株会を結成し、退任・退職時には会に株式を残していき、社外で分散しないようにして、役員社員の会社として永続的に継続できるようにする。

といったところでした。

創業者が亡くなって四半世紀になろうとしています。
会社はその描いた通りの姿で運営されています。
社内からの昇格社長も既に3人目です。
社内のモチベーションは高く、業績も順調に推移しています。
創業者もさぞかし満足して天国から見守っていることでしょう。

担当:田口 光春(タグチ ミツハル)

非同族企業にするには準備と時間が必要
創業家の全面的協力が欠かせない

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