第59話「親子の情が経営を惑わす」|事例に学ぶ 事業承継|【公的機関】事業承継なんでも相談所|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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事例に学ぶ 事業承継
事業承継相談員が見聞きした事業承継にまつわる「うそのような本当にあった出来事」をシリーズで紹介していきます。
ただし、みなさまに問題点をわかりやすく考えていただくため、少し脚色しています。その点はご容赦ください。
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第59話「親子の情が経営を惑わす」

創業から半世紀。大手上場企業の下請けながらも、発注企業が持ち得ていない技術力で確固たる地位を確立している企業で起こったケースをご紹介しましょう。

当時の社長は50歳代で3代目でした。
創業者の長男が2代目で、当時は80歳を超えていましたが、会長として実権を持ち続けていました。
また、その妻、つまりは社長の母親も経理の責任者として社内にいました。

相続税への対策を銀行から勧められことをきっかけに、持株会社を設立しました。
会長夫婦は保有していた株式のほとんどをその会社に移すまたは売却したのですが、この対策には大きな間違いがありました。
持株会社が会長夫婦を株主として設立されており、何ら税金対策になっていなかったのです。
会長夫婦は、株を持株会社に移すための新たな借り入れで負債を抱えたばかりか、株式売却益にかかる税金まで納めなければなりませんでした。

これだけでも事業承継のケースとして学ぶことはありますが、この企業の事例で注目したいのは、その税金対策ではなく、親子関係についてです。

社長には弟がおり、取締役工場長の職を与えられていました。
しかし、工場長の日ごろの仕事ぶりは、役員の職に就く者が行うものではありませんでした。
マネジメントより現場仕事ばかり、また社員へのパワハラともとられかねない言動を繰り返すなど問題含みで、会長も社長もその実態を理解していました。

このような状況の中、会長も、相続対策を具体的に考えなければならないと思うようになりました。
何しろ相続(税)対策は終わったと思っていたものが、そうではないことが分かったからです。

会長は、子ども2人のそれぞれの性格や経営者としての資質の適否を見た上で、会社が将来とも安定して運営されるために、社長が安心して経営できるだけの株式持分を確保させることを考えました。
社長の長男も4代目候補として入社し、経験・教育を積ませており、長男直系で事業を継続していくことがベストであると判断されたからです。

しかし、ここで自分もいずれは現社長の兄に次いで社長ができると思っていた次男が行動に出ました。
会長の考えを知り、何とか自分の希望が叶うようにするために、まずは会長へ直訴し、それが不調に終わると母親へ懇願したのです。

次男の話を聞いた母親は、会社経営に関わる人としてではなく、一人の親として反応してしまいました。
何としても次男の思いを叶えてあげようと、会長に思いの丈を強く話されたのです。

それを聞いた会長は困惑してしまいました。
会社の将来、長男である社長の立場と、妻であり二人の息子の母親である妻の思いを考え併せた結果、袋小路に迷い込んでしまわれました。
そして、株式移動については、考えそのものを中断されたのです。

複数の子を持つ親として、どの子も平等に扱いたいと思う気持ちは理解できます。
しかし、こと経営となるとそうはいきません。
合議、すなわち複数人による意見の出し合い・調整による経営は、他人同士だからこそ上手く進む例が多いものです。
兄弟など血縁関係が深い間柄では、残念ながらトラブルとなる例が多く、よほど役割分担がしっかり成され、かつ双方が納得し合っていなければ、極めて難しいと言わざるをえません。
相続は平等であるべきですが、その中身、何を誰に分配するかは、会社経営と重大な関係があることを認識しなければなりません。
その意味では、第11話の事例も参考にしていただけるでしょう。

(2018年11月27日更新)

担当:事業承継相談員 田口 光春(タグチ ミツハル)

「将来を見越しての自社株対策が必要」
「親としての情が承継対策を歪める可能性がある」
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