業歴100年を超える高収益のメーカーの話です。
この会社では、100年間、創業家が代々経営を担ってきました。
6代目社長も70歳を超え、事業承継を真剣に考えなければいけない、むしろ遅すぎるタイミングでもあったのです。
社長には娘が2人。次女は他家に嫁ぎましたが、長女には縁が訪れていませんでした。
社長は次女の子ども、つまり孫に期待を寄せるようになったのです。
しかし、孫が会社を継げるほどに成長するまでには、社長には時間がなさすぎます。
そこでワンポイントリリーフとして、一時的に社長を外部から招聘することを考えたのです。
社名が知られないようにするため、支援機関がサポートして、その機関名で募集をしました。
新聞に「中小製造企業の社長を求む!」とした求人広告を1回だけ掲載したところ、応募者は100人を超えました。
いずれの応募者も、大企業の幹部や外資系日本法人の元経営者など、そうそうたる顔ぶれでした。
書類面接、一次面接を経て、数人に絞り込み、迎えた最終面接。
最終質問で「社長をやってもらうと銀行借入の個人保証をしてもらうことになるが?」
と問いかけると、全員の返答は「社長ではなく参謀ではいけないでしょうか」。
製造業ならある程度の設備資金は銀行から借りているのは常識であり、
この会社は高収益であることから返済できなくなる可能性はゼロに近いにも関わらず、
全員からこの回答でした。
こうしてリリーフの外部からの招聘作戦は失敗したのです。
オーナー家一族なら銀行保証も引き継ぐことは当たり前として受け入れられますが、
社員をはじめオーナー家以外ではかなり高いハードルと言えるでしょう。
外部招聘をあきらめた社長は80歳を超えて今でも現役、
長女を後継者にと教育に勤しんでおられます。
初めから女性だからという考えを捨てて、長女を後継者に指名していたら、
こんな回り道は必要なかったのではないかと思われます。
担当:事業承継相談員 田口 光春(タグチ ミツハル)
事業承継に必要な準備へのアドバイス、また行動のためのサポートを行っていきます。経営者・後継者どちらのお立場の方でも、お気軽にご相談下さい。