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事例に学ぶ 事業承継
事業承継相談員が見聞きした事業承継にまつわる「うそのような本当にあった出来事」をシリーズで紹介していきます。
ただし、みなさまに問題点をわかりやすく考えていただくため、少し脚色しています。その点はご容赦ください。
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第91話「真の会社の姿と、経営者の事業に対する思いが継ぐか否かの判断材料」

事業承継の相談を多く受けていて、後継候補者からの相談で数多く寄せられたもの中で代表的な事例を紹介します。

私のところに相談に来られたのは、後継者として社長から指名された方でした。
社長は70歳を超えられ、事業承継は喫緊の課題であることは理解されていましたが、社長夫婦には子どもはなかったため、社長の妻の兄弟の子、つまり義理の甥をゆくゆくは後継者にするとして入社させていました。

そしていよいよ事業承継を具体化させる段取りになり、その話を打診されましたが声をかけられた後継候補者は決断ができず、私のところへのお越しになったのです。
相談の第一声が「(事業承継の)この話を受けていいのでしょうか?」ということでした。

そこで、会社の業績はどうか、銀行など金融機関からの借入はあるか、あればそれに対して社長が個人保証をされていないか、株主はどうなっているのか、といったことを尋ねました。
しかし、いずれの質問に対しても「わかりません」というのが回答でした。

そうした事情から、次のような問題が指摘できました。
まず、会社の実情がどうなっているのか、つまりは決算の実態はどのようなものかわからないで後継者になることの問題です。
そこには多額の負債を抱えて、事業の将来性にも疑問がある問題会社を引き受けることの危険性があります。
そうした事情を理解した上で覚悟して後継者になるのならいいのですが、引き受けた後に初めて知ったのでは話になりません。

次に銀行借入に関する個人保証問題です。
借入にかかる個人保証が事業承継の足かせになっているとして、個人保証の解除について国を挙げて取り組んでいるところです。(https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/

これも後継者の問題ではなく、現経営者、継がせる側が手続きをすることが前提であり、この相談者のような後継者ができる問題ではありません。

ですので、そうした取り組みが行われていることを社長に知ってもらうことが大切とお伝えしました。

さらに株主の状況です。
社長と相談者は義理の叔父、甥の関係ですので、相談者は相続人にはなれません。
社長には配偶者がおられるから当然相続人ですし、兄弟あるいはその兄弟が故人の場合はその子供が相続人あるいは代襲相続人となるからです。

そうなると相談者が社長に就任しても、将来的に会社株式を相続で受け取ることは難しい(社長の妻の相続分の二次相続なら可能性はありますが)ため、安心して経営するわけにはいかなくなってしまいます。

できれば事前に社長からの贈与、あるいは売買で安心して経営できる範囲の株式が取得できることが、後継者となる条件であるとお話ししました。

このように経営者から後継候補者に会社の実情を何も知らせず、継いでもらおうという話は実の親子でも時々見受けられます。

相続という面からは、経営者のすべての保有財産(プラスもマイナスも)を明らかにすべきですが、少なくとも個人財産のうち会社に関わるもの(前に出ました個人保証や自社株の状況)は絶対公表すべきです。
それをもって後継者になるかの判断を求めるべきです。
経営者の会社事業に対する真摯な思いを伝えれば、たとえ厳しい状況にある事業でも、後継者は継いでくれるでしょう。

継がせる側の経営者は、後継者が継ぎたいと思う事業、会社の状況にすべき義務があり、後継者には継ぐ自由、継がぬ自由があるのです。

まだ会社の実像が明らかになっていないその会社は、最初の相談から5年を超え、間もなく80 歳を迎えようとしている社長でありながら、後継者問題は解決していません。

(2021年8月24日更新)

担当:事業承継相談員 田口 光春(タグチ ミツハル)

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