第54回 組織開発が注目される背景と取り組みのポイント!!|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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2024.02.27公開

組織開発が注目される背景と取り組みのポイント!!

中小企業においても人材や働き方の多様化が進み組織マネジメント上、新たな課題を感じている方も少なくありません。そんな中、組織のパフォーマンスを引き上げる働きかけとして、“組織開発”に向けられる関心が高まっています。今回は、組織を見つめ直す際に大事なポイントについて、組織開発が注目される背景から順に解説します。

① 組織開発が注目される背景

なぜ今、組織開発が注目されるようになっているのでしょうか。それは、下記のようなことが原因で、従業員がお互いに話し合ったり、助け合ったりして、活き活きと働くことが困難になっているからだと考えられています。時代やテクノロジーの変化と共に従業員の“働き方”も変化することにメリットがある一方で、別の課題への対応が必要となっています。
〇個人ワークの増加
分業化が進み、抱えた仕事を1人でこなさなければならない状況が増えています。テレワークを可能にしたり、各々のスタイルに合わせた働き方ができたりするなどのメリットがある一方で、サポートやコミュニケーションの不足により、ストレスが増加する可能性にも目を向ける必要があります。
〇ダイバーシティの高まり
従来の日本企業には、同じような価値観を持つ人が多く集まる傾向がありました。しかし、現在は年齢、性別、国籍、雇用形態などが異なる多様な人が職場に集まり、考え方や価値観の違いが組織運営を困難にしています。その為、違いを活かしてよりよい組織にするための働きかけが必要となります。
〇効率化重視
会議や打ち合わせ時間の短縮、メールやチャットなど、社内のコミュニケーションツールの活用により、対面でのコミュニケーション時間が短縮される傾向にあります。便利な反面、組織運営上必要なコミュニケーションが不足していないか考える必要があります。

② 組織開発とは

実は組織開発の定義には明確なものがなく、組織開発に関する専門書を読んでも、その定義は様々です。そこで、組織開発を簡単に理解するために、下記のように表現したいと思います。
「組織開発とは、共通の目標に向かって、バラバラなメンバーが、組織やチームとして体を成し、うまく動くようにする意図的な働きかけ」(引用:中原淳/中村和彦 著『組織開発の探求』(ダイヤモンド社))

③ 「組織」が成立するために大切にしたい3要素

先程から「組織」という言葉を再三使っていますが、アメリカの経営学者チェスター・バーナードは、「組織」が成立するためには次の3つの要素があり、どれか1つでも欠けている場合には不完全な組織として、組織が健全に機能しなくなると提唱しています。
〇共通目的
組織のメンバーに何のためにここで働いていますか?と問いかけた時に、ある共通の答えが返ってくるでしょうか。もしもバラバラな答えが返ってきた場合には、メンバーのベクトルがバラバラになっているため、注意が必要です。共通目的とは、組織が同じ目的を持って、またベクトルを合わせて何かに取り組むことを指します。共通目的は、会社やチームでは、「企業理念」、「経営ビジョン」、「目標」、「スローガン」などに置き換えられます。スポーツのチームでは、「スローガン」、「目標」はわかりやすく、目立つように掲げられていることが多くありますが、会社ではいかがでしょうか。策定されていない、または策定されてはいるものの浸透していない、実感がないという例が散見されます。「共通目的」は組織を構成するために大変重要な要素の一つとしてお考えください。
〇貢献意欲
貢献意欲とは、組織のメンバーが組織に貢献したいと思うモチベーションや、労力・知恵などを積極的に提供することなどを指します。 「協同意欲」とも言われることもあります。これには、組織に対してだけではなく、メンバー同士の貢献、助け合いも含まれ、メンバーが一緒に働き、互いに助け合いながら組織に貢献したいという意欲でもあります。2023年のワールドベースボールクラシックで大谷選手が見せたチームプレーは正に「貢献意欲」の高さが如実に表れたプレーだったのではないでしょうか。「貢献意欲」は組織が機能するために不可欠な要素となります。
〇コミュニケーション
組織においてコミュニケーションは、メンバー同士の情報共有に不可欠であり、コミュニケーションなしには組織が物事を進めることが出来ません。コミュニケーションは、縦(上司と部下)、横(メンバー間)、両方のコミュニケーションを意識することが必要です。最近では、「心理的安全性」という言葉が頻繁に聞かれるようになっていますが、円滑なコミュニケーションが組織の成果を高めることを示しています。コミュニケーションについては、既に取り組んでおられる組織も多くありますが、改めてコミュニケーションが重要な要素だと認識いただければと思います。

④ 組織開発の代表的な取り組み

組織開発の取り組みは多岐にわたっており、コーチング、1on1ミーティング、食事会などもその一環として考えられます。ここでは、組織開発の代表的なアプローチである診断型組織開発と対話型組織を、書籍「中村和彦 著『入門 組織開発』(光文社)」を参考にして紹介します。
〇診断型組織開発
診断型組織開発とはその名の通り、診断を元に行われますが、診断の仕方は様々です。代表的な診断は、アンケートやヒアリングなどがありますが、まず大切なことはメンバーに正しく回答してもらうことです。その為にも、診断の目的、データの収集、結果のフィードバック、活用の仕方など一連の流れを丁寧に説明する必要があります。診断後は、必ず分析結果をメンバーにフィードバックし、課題や今後のアクションプランなどについてメンバー間で対話するなどのサイクルを一定の間隔で回すことを心がけてください。
〇対話型組織開発
対話型組織とは、アンケートやデータ分析などの診断フェーズがない取り組みや手法です。対話を通じて、メンバーの強みや過去の成功・感動体験、大切にする価値観などに焦点をあて、強みや潜在力が活き活きと発揮される状態をめざす取り組みです。先に述べた「共通目的」の策定にも非常に有効な取り組みですので、興味を持たれた方は是非取り組んでみてください。

⑤経営者が果たすべき役割

経営者としてご自身の組織を考える際には、チェスター・バーナードが提唱した「共通目的」、「貢献意欲」、「コミュニケーション」に目を向け、ご自身の組織をこの3つの要素で確認することをおすすめします。特に、「共通目的」にはご注意ください。単に“経営理念がある”、“経営計画がある”、“売上目標がある”、といったことではなく、その「共通目的」がメンバーにとって、本気で心からめざしたいと思える目的になっているかが大変重要になります。本気で心からめざしたいと思える「共通目的」があれば、「貢献意欲」、「コミュニケーション」も備わりやすくなります。長期的に業績を伸ばしている会社、好成績を残しているチームは魅力あふれる「共通目的」を軸にしていることが非常に多くあります。

「共通目的」、「貢献意欲」、「コミュニケーション」の3要素が機能し、皆様の組織が経営者・リーダー・メンバーにとって、素晴らしい組織になることを願っております。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

太田 信之(オオタ ノブユキ)氏

太田 信之(オオタ ノブユキ)氏

 

中小企業診断士
健康経営エキスパートアドバイザー
大阪産業創造館 経営相談室 スタッフコンサルタント
大学卒業後損害保険会社にて営業・リスクマネジメントに従事。その後、公立学校教師、保険代理店にて中小企業の財務改善、リスクマネジメント等経営支援に従事し、現職に至る。

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