消費者の好みが多様化し、市場における競争が激しさを増す中、マーケティングは企業経営にとって重要なテーマとなっています。
マーケティングの基本的なポイントについてお伝えする本シリーズの第1回目は、「マーケティングとは?」「マーケティングプロセス」について解説します。
マーケティングとは?
(1)マーケティングの定義
マーケティングは、フィリップ・コトラーによれば「ニーズに答えて利益を上げること」と定義されています。
P.Fドラッカーは、「マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングがめざすものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」としています。
さまざまな定義はありますが、売る側の一方的な思い込みや押し付けではない点を抑えておいてください。
(2)マーケティング活動は誰がやるか?
マーケティングの担当者は、営業担当者やWEB担当者になっていることが多いです。
ただし、マーケティング活動は売るための仕組み作りが目的なので、会社全体で取り組むことが必要です。
マーケティングプロセス
マーケティングは、次のようなプロセスで進められ、
「誰に」「何を」「どのように」といった要素を決めていきます。
図表1:マーケティングプロセス
(1)マーケティング環境分析
マーケティング環境分析は「外部環境」と「内部環境」に分けて考えます。
①外部環境分析
外部環境分析は
(ア)マクロ環境分析
(イ)顧客分析
(ウ)競合分析
とそれぞれ分析対象を分けて、市場にある機会と脅威を探っていきます。
(ア)マクロ環境分析
マクロ環境分析には「PEST分析」が用いられます。
PEST分析とは、政治・法律(Politics)、経済(Economics)、社会(Social)、技術(Technology)といった視点で自社への影響を分析するものです。
それぞれ、コンロトールすることはできませんが、変化を予測するために必要な情報です。
・政治・法律(Politics)
自社に影響を及ぼす政治・法律を検討します。
政治・法律分野の特徴は、経済現象のような連続性がなく急激に変化することがあることです。
例としては、環境規制などがあり、関連法規の情報収集が欠かせません。
・経済(Economics)
経済(指標)が与える影響を検討します。
経済事象の特徴は、政府統計など信頼性の高い情報が多いこと、定量的に捉えることができること、大きな流れを俯瞰してみることができることです。
例としては、GDPなどの数値などが含まれます。
以下のようなサイトも参考にしてください。
<政府統計の総合窓口>
<電子政府の総合窓口>(白書・年次報告など)
・社会(Social)
社会変化が自社に与える影響を検討します。
社会に係る外部環境の特徴は、定性的であることです。ニュースソースなどで主に登場するライフスタイルの変化などが含まれます。
・技術(Technology)
外部環境の中でも技術変化を取り上げます。
自社に関係のある技術動向などが含まれます。
(イ)顧客分析
顧客分析は、購買人口、顧客にヒアリングなどの情報収集です。
特定業界に絞った調査会社のデータなどもありますが、POSデータなどシステム内のデータの分析、顧客ニーズ、購買決定プロセスなどの情報収集もこれに該当します。
(ウ)競合分析
競合分析は、競合の戦略、競合のパフォーマンス(売上、シェア、利益、顧客数)、経営資源(営業担当者数、生産能力)などです。
②内部環境分析
内部環境の分析は、自社の製品特性、これまでのマーケティング戦略、人的資源、リー
ダーシップ、業界における位置づけなどの定性情報と市場シェア、資金力などの定量情報
があります。
内部情報の分析を通じて、客観的に自社の強みや弱みを分析します。
③3C分析
顧客分析(Customer)、競合分析(Competitor)、内部環境の自社(Company)の分析の3つを組み合わせて、顧客、競合との関係性を俯瞰して分析する方法を3C分析と言います。
顧客のニーズや消費行動など記入し、それに対する自社の商品やサービスの特徴が一致しているかどうか記入し俯瞰して確認します。
競合の特徴についても書くことで、その市場における違いが明確になってきます。
価格での勝負は避けて、顧客に提供する価値で違いが明確になっているか確認してください。
図表2:3C分析
(2)セグメンテーション・ターゲティング
セグメンテーションは、大きな市場を同質と思われる小集団(セグメント)に分けることです。
セグメントに分ける理由は、ニーズが多様化している中で、市場全体を顧客対象とすると企業活動が非効率になるからです。
顧客の要望に個別に対応するのは丁寧ですが、一方で資源は限りがあるため、ある程度顧客を層として捉えることで限られた資源を有効に活用することができます。
さて、セグメントに分けるためにセグメンテーション変数が用いられます。
セグメンテーション変数の代表的なものは、地理的変数、人口動態変数、心理的変数、行動変数などです。
図表3:セグメンテーション
次にターゲティングですが、内部情報と照らし合わせながら、自社の顧客になりえるセグメントを探します。
ターゲットを決める際には、「売上と利益が確保できる」、「自社の強みが活きる」、「価値観が沿っている」などを踏まえて検討します。
そして、「測定可能性(ターゲットの反応が測定できること)」、「到達可能性(ターゲットに到達できること)」、「維持可能性(利益を得られる、持続的に成長させられること)」、「実行可能性(魅力あるマーケティング戦略を実行できること)」などを踏まえてターゲットを決定します。
(3)ポジショニング
ポジショニングとは、ターゲティングの中で競合との同質化を避けるため自社の立ち位置を決めることです。
ポジショニングは下図のようなポジショニングマップでまとめられ、競合と差別化ができているか確認していきます。
ポジショニングマップの縦軸と横軸(評価軸)は、成功事例や顧客の声などの内部情報を集めながら顧客が何を評価するか考慮して作ります。
中小企業の場合、価格や品質といった評価軸は避け、提供するベネフィットで決めてください。
そして、ターゲットの中でどの評価軸なら一番になれるかを考え、立ち位置を決定します。
図表4:ポジショニングマップ
(4)マーケティング・ミックス(4P)
マーケティング・ミックスとは、決めたターゲットに対して、顧客が求めるベネフィットを提供するため、
「製品サービス(product)」
「価格(Price)」
「プロモーション(Promotion)
「流通(Place)」
を組み合わせていきます。
それぞれの頭文字がPで始まるため4Pと言われています。
マーケティング・ミックスの各要素は、自社でコントロールできるものばかりです。
これらを組み合わせて、ターゲットとどう関わり、長くお客さんになってもらうためにはどうするかという戦略を立案していきます。
図表5:マーケティング・ミックス
以上、マーケティングの定義からマーケティング・ミックスまで、マーケティングプロセスの流れを説明しました。
便宜上、プロセスの工程順に説明をしましたが、実務上は各プロセス間で行ったり来たりしながら進められることもあります。
※図表1~図表5は大西自作による。