本コラムでは、4回に分けて、社会保険業務の基礎知識について説明していきます。今回は社会保険制度の概要と、加入が必要となる適用事業所の要件について解説いたします。次回以降では被保険者の要件について、事業所関係と入退社関係の手続き、保険料の納付関係の手続きについて取り上げる予定です。
社会保険制度について
我が国の社会保険制度は、労働保険と社会保険に大きく分けられます。そして、労働保険は雇用保険と労災保険(労働者災害補償保険)に分けられ、社会保険は健康保険や介護保険、厚生年金保険等に分けられます(介護保険への加入は、原則、自動的に行われるため、本コラムでは触れません)。
所得税の確定申告等においては、社会保険料控除のように、労働保険も含めて社会保険と称されることもありますが、本コラムでは、以下の表のように区分してみていきます。
適用事業所とは
それぞれの制度によって、適用対象となる事業が異なります。適用対象となる事業に該当すると適用事業所となり、被保険者となる者がいる場合には手続きが必要となります。
ここでは、制度ごとの適用事業の要件についてみていきます。
労災保険
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◆ 原則として、一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべて適用事業となります(個人の農林水産業を除く)。
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◆ 以下の事業について、労働保険に加入するかどうかは、事業主又はその事業に使用される労働者の過半数の意思に任されています(暫定任意適用事業)。また、労働者の過半数が希望するときは、事業主に任意加入の申請をする義務が生じます。保険関係は、事業主が任意加入の申請をし、その承諾を得て初めて成立することとなります。
- 労働者数5人未満の個人経営の農業であって、特定の危険又は有害な作業を主として行う事業以外のもの
- 労働者を常時は使用することなく、かつ、年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の林業
- 労働者数5人未満の個人経営の畜産、養蚕又は水産(総トン数5トン未満の漁船による事業等)の事業
雇用保険
- ◆ 原則として、労働者を雇用する事業は、その業種、規模等を問わず、すべて適用事業となります(個人の農林水産業を除く)。
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◆ 次のすべての要件を満たす事業について、雇用保険に加入するかどうかは、事業主及び労働者の2分の1以上の意思に任されています(暫定任意適用事業)。また、労働者の2分の1以上が希望するときは、事業主に任意加入の申請をする義務が生じます。
- 農林水産業(船員が雇用される事業を除く)であること
- 個人経営であること(法人、国、地方公共団体等が経営する事業ではないこと)
- 常時5人未満※の労働者を使用すること
※ 「常時5人未満」の判断にあたっては、雇用保険法の適用を受けない労働者も含めて計算します。
健康保険・厚生年金保険
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◆ 次のいずれかに該当する事業の事業所は、強制適用事業所になります。
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適用業種である事業の事業所であって、常時5人以上の従業員を使用するもの
適用業種
製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告業、教育研究調査業、医療保健業、通信報道業等
♢令和4年10月から「法律・会計にかかる業務を行う士業」に該当する個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所は、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となりました。
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国、地方公共団体又は法人の事業であって、常時従業員を使用するもの
- 船員法1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者が乗り込む船舶(厚生年金保険のみ)
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◆ 任意適用事業所
- 強制適用事業所以外の事業所であっても、従業員の2分の1以上が健康保険・厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることができます。
- 任意適用事業所となった場合、従業員の全員(被保険者から除外される人を除く)が加入することになります(任意適用事業所の場合、健康保険のみ・厚生年金保険のみのどちらか一つの制度のみ加入することもできます)。
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◆ 特定適用事業所(任意特定適用事業所)
- 平成28年10月から、短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大が実施されています。また、平成29年4月1日以降、特定適用事業所以外の適用事業所が労使合意に基づいて、任意特定適用事業所の申出を行うことができるようになりました。
- 令和4年10月1日以降における特定適用事業所等の該当基準は以下のとおりです。
特定適用事業所等で働く短時間労働者が以下の要件を満たすと、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
適用事業所のまとめ
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◆ それぞれの制度において、適用事業に該当すると適用事業所となります。適用事業について、個人事業と法人に分けてざっくりまとめましたのでご参考ください。
(2022年12月13日掲載)
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