第6回 『融資』の基本知識③ ~金融機関との付き合い方2~|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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2020.7.21公開

『融資』の基本知識③
~金融機関との付き合い方2~

前回の「『融資』の基本知識②」では、金融機関との付き合い方として、金融機関を選ぶ視点、ケース別融資の種類、取引を円滑にするために必要なことについてご説明しました。

日ごろから金融機関とよい関係を築いておくと、有事の際も、資金調達がスムーズになる傾向にあります。
今回は、平常時から行っておきたい、下記の5つのポイントについて解説します。

①決算報告は必ず行いましょう
②経営計画を提供しましょう
③試算表を毎月提出しましょう
④ローカルベンチマークを活用しましょう
⑤経営者保証ガイドラインの活用を検討しましょう

①基本中の基本!金融機関への決算報告は必ず行いましょう

決算書・申告書ができあがり、申告まで完了したら、取引金融機関に対して決算報告を行いましょう。
実は、金融機関には貸した方の責任があり、その後の事業の進捗を見守るモニタリング機能を担っています。
そのため、金融機関は定期的に経営状況を報告してくれる企業を好みます。
融資先について、内部に報告をする必要があるからです。

毎年の決算が終われば報告に行き、現状とこれからの展望について共有しておくことがよいでしょう。
ただ口頭で話すのではなく、要約をまとめたA4用紙1枚くらいの報告書があることが望ましいです。
金融機関の担当者はそれをもとに内部に報告ができるので、とても喜ばれます。

記載しておきたい主な項目は、
□今決算期の業績について(業界の業況、自社の状況)
□来期の展望について(どんな動きがあり、どのように影響を与えそうか、業績はどうなりそうか)
□(希望があれば)金融機関に希望する資金調達方法
です。

記載事例がありますので、ご参考ください。
カバーレター例
決算報告カバーレター記載例(Word)

②経営計画を策定して、自社の展望を知ってもらおう

金融機関は、この会社に融資をして、きちんと返済してもらえるのかどうかを常に知りたいと考えています。
また経営者自身が、今の会社の状況をどのように捉え、これからどうしていこうと考えているのかについても、関心があります。
展望を会話だけで伝えるのではなく、数値計画も共有しておけば、金融機関の関心事にも答えることができます。

経営計画を策定したら、ぜひ金融機関にも提出し、自社の展望や課題を知ってもらいましょう。
金融機関はネットワークの宝庫ですから、取引先の紹介も期待できるかもしれません。
本業支援に力を入れている金融機関が増えてきていますので、積極的にどんな支援をしてほしいかを伝えておくことはとても大切だと思います。

③毎月試算表を提出しましょう

できれば、毎月15日くらいに月次決算を行い、その結果を金融機関に報告しておきたいものです。
毎月の状況がわかれば、どこでどんな支援が必要かについて、検討・提案してもらいやすくなります。
可能であれば、試算表だけでなく、会社の現状についてのコメントも含めた報告ができるとよいと思います。
そのような仕組みやサイクルを作ることができたらベストです。

最近では、毎月、会計専門家による巡回監査を経て、正確性を確保したうえで、試算表や資金繰り実績表をオンラインで取引金融機関に送れる、といった会計システムも出てきています。
金融機関にとっては、試算表をやり取りする手間がなく、また会社へ訪問する前に入手できるため、一通り目を通したうえで経営者と話をすることができる、と少しずつ浸透しています。

金融機関の担当者は、先述したように1人で数十件の担当を持っているため、ひとつひとつの企業について、じっくり情報を取りに行く時間がありません。
決算書や経営計画同様、状況を積極的に開示することが大切です。
なかなか情報提供がないところと、積極的に開示してくれるところを比較すると、どちらをより応援したいと考えるでしょうか。
断然に後者に対して応援したくなると思いますし、それが、資金調達を円滑にすることに繋がります。

④ローカルベンチマークツールを活用しよう

最近の金融機関では、「事業性評価」といって、将来性も加味して融資をする姿勢が強まっています。
決算書に表れる数値情報のみならず、会社の強みや弱みなどの内部環境、機会や脅威などの外部情報など、定性的な項目ついても情報を求めています。
しかし、じっくり情報収集をするマンパワーが不足しているため、こちらから積極的に開示する必要があります。

定性的な情報を整理するためのフレームワークやツールはたくさんありますが、一番のおすすめは「ローカルベンチマークツール」です。
財務情報のような定量的な情報と、会社の強みや弱み、経営者の考え、事業の商流やバリューチェーンなど、数字に表れない定性的な情報を効率よくまとめられるツールになっています。

中小企業庁「会社が病気になる前に『企業診断ツール ローカルベンチマークツール』」HP
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/

ほとんどの金融機関でこれに沿った情報収集をしていますので、このフォームで自社のことをまとめて渡すと、大変喜ばれます。
実際に作ってみると、自社を客観的に見つめるきっかけにもなります。
自社の課題整理のためにも、一度作ってみてはいかがでしょうか。

⑤経営者保証ガイドラインの活用を検討しましょう

金融機関から借入をするときは、多くのケースで代表者が連帯保証人となっています。
もし業況が悪くなり、会社からの返済が困難となり、倒産状態になった場合には、連帯保証人である代表者が返済することとなります。

しかし近年は、過度に代表者の連帯保証に依存することは、事業への再チャレンジを阻害するなどの影響があることが問題視されています。
そこで、中小企業庁と金融庁の後押しのもと、2014年に経営者保証に依存しない融資の促進策の一環として制定されたのが、「経営者保証に関するガイドライン」です。

「経営者保証に関するガイドライン」HP
https://hosho.go.jp/

このガイドラインで示される経営状況に関する要件を満たすことで、個人保証を求められることなく資金調達を実現できる可能性があります。
また、事業承継の際に、先代経営者が提供していた個人保証を解除される可能性が高まります。
個人保証が解除できれば、万が一会社の業況が悪化し、早めに廃業の判断をした場合などにも、個人の財産から弁済することなく、生活に必要な財産を残して再出発できる可能性があります。

この経営者保証ガイドラインには、適用されるための要件があり、あらかじめ要件の内容を理解したうえで、対処しておく必要があります。
すぐに満たせなくても、要件に合致できるよう、努力をしていくことが大切です。
求められている3つの要件は、次のとおりです。

□高い返済能力があること
(財務状況や業績を鑑みて、今ある企業の財産やキャッシュフローをもって、借入金の返済が可能と見込まれること)
→実質的には、このような状態をめざして、会社の磨き上げをすることが求められています。

□適時適切に財務状況が金融機関に開示されていること
(毎月正しい試算表を金融機関に開示している)

□法人と経営者個人との関係が明確に区分・分離され、役員報酬や配当、貸付などの資金のやりとりが社会通念上適切な範囲を超えない状態であること

これまではガイドラインに則った融資に積極的でなかった金融機関もありましたが、少しずつ現場に浸透しつつあります。
この制度については、経営者サイドがよく勉強し、条件を満たせるように努力をしたうえで、こちらから話を持ち掛けて相談することが大切です。

2018年1月には、ガイドラインのより円滑な運用を図るため、よりポイントを的確にまとめたQ&Aが改定されました。
個人保証の要否の検討においては、事業の内容や持続・成長可能性などを含む「事業性」を適切に評価すべしと明確化されました。
これにより、金融機関側が企業の事業性に着目して評価する方針が明らかになったのですが、先述のとおり、金融機関側ではマンパワーが限られています。
より、企業側からの決算報告や、ローカルベンチマークツールを活用した情報共有などが重要になっています。

資金調達をされている企業、これから必要な企業では、このガイドラインを確認し、経営力の強化、経営の透明性の改善を図ることなどに、早い段階から取り組んでおくとよいでしょう。

以上が、よりよい関係を築くための金融機関との付き合い方です。
よい関係を築くことは、会社の資金調達力を高め、経営の継続性を確保することに他なりません。
会社を守るため、ひとつでも多く実践いただけたら幸いです。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

神佐 真由美(かんざ まゆみ)

神佐 真由美(かんざ まゆみ)氏

角谷会計事務所 税理士
大阪産業創造館 経営相談室 経営サポーター

大学卒業後、株式会社TKCに入社。
税理士事務所を顧客としたシステム営業に従事。
多様な税理士事務所を担当する中、中小企業支援を行う税理士に憧れ、自ら税理士の資格を取得。
以降、京都と大阪に拠点のある税理士法人等に勤務し、税務・会計顧問業務のほか、創業支援、経営改善、経営計画策定業務等に携わり、経験を積む。
2013年、現在の所属である角谷会計事務所に入所。
顧客と一緒に作る「活きた経営計画」策定支援や、リアルタイムで現在の状況がわかる業績管理と毎月の巡回監査・経営助言を通して、強い会社づくりの支援を中心に活動している。
徹底した現場主義で「現場がイメージでき、行動につながってこそ、会計の意味がある」がモットー。

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