第43回 事業を軌道に乗せるためのビジネスプランのつくり方・活かし方|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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経営事典

2023.06.20公開

事業を軌道に乗せるためのビジネスプランのつくり方・活かし方

1.事業計画をつくる目的

事業計画は、会社の「なりたい姿」への道筋を記し、ビジョンを具体化し、経営資源を集中し、利害関係者に事業を説明する目的で作成されます。
金融機関への融資の申し込みや、出資者からの資金提供、または他社との取引開始依頼などの場面で事業計画の提出が求められるので、外部要請に応じて作るものと考えている方は結構多いです。こうして外部からの要請で作った場合も「やるべきことが明確になった」、「考えをまとめることができた」といった感想を良く耳にしますので、作成のメリットは大きいといえます。
特に創業時には、融資のための創業計画書(日本政策金融公庫)、補助金の申請(小規模事業者持続化補助金など)で事業計画に触れる機会がありますが、一方で融資の必要性がなく、外部からの要請がないと「事業計画は頭の中にしか存在しない」といったケースも少なくありません。

事業計画は、頭の中にあるアイデアや構想をあえて具体的な形にしていきます。アウトプットしていく過程で、頭の中を自ら整理し言語化していくことで、人に理解してもらえるようになります。過大なものへの投資、楽観的な売上予測など、「こんなはずじゃなかった。」というケースは、事業計画が存在しない場合に発生することのほうが多いです。面倒ではありますが、このコラムで事業計画の作成に関心をもっていただければ幸いです。

2.事業計画の作り方

事業計画には決まったフォーマットはありません。詳細に凝り始めると大作になってしまうこともありますので、初めて作成する方は、キーワードを使って要素を書き出し、徐々に事業計画を具体化していく方法を試してみてください。大阪産業創造館でもテンプレートを用意していますので、まずは事業計画に必要な要素を確認してください。

(1)事業計画作成時に最初にやること
事業計画を作るときに最初にやっていただきたいことがあります。それは、①~⑤にあげた事業計画をつくる目的を明確にすることです。

①事業計画をつくるねらい
②誰の為に作成するのか
③誰が作成するのか
④伝えることと求められること
⑤伝えていく方法

こうした事業計画の目的をあえて作成するのは、事業計画の詳細度合いやポイントが見えてくるからです。融資のための事業計画であれば、金融機関からの支援を円滑に受けるために詳細説明が求められます。従業員の待遇改善のための事業計画であれば、従業員に協力と理解を得ることが前提になり、売上目標、行動計画などを記載するので、内容も変わってきます。

例えば、融資の為の事業計画の場合、返済が滞らずに行われることを詳細に説明する必要があります。金融機関はリスクを最小限に抑える為、事業の将来性や収益性、返済能力などを評価します。したがって、売上予測や財務計画、市場分析など、客観的で信頼性のある情報に基づいた計画が必要です。

一方、従業員とともに会社の成長をめざし待遇改善を行う場合、事業計画では従業員に対して協力を促し、理解を得るための要素が重要になります。働き方の見直し、評価制度や福利厚生制度の改善など、従業員の感心やニーズに応える内容を盛り込むことが求められます。

このように事業計画の目的に応じて、記載内容を適宜修正することで読み手に取ってもわかりやすいものになります。読み手にとってわかり易くカスタマイズするだけで、めざすビジョンや本筋は変わらないことがポイントです

(2)事業計画への記載内容
①事業内容
事業内容は、コンパクトかつ魅力的に伝えたいところです。一言で、“誰に”、“なにを”、“どのように”といった内容で記載します。結論を先に述べて、各論に触れて行きます。

焼き菓子店で例をあげると、
焼き菓子店:「小麦アレルギーを持つ方に、グルテンフリーの焼き菓子を提供し、スペシャリティコーヒーとのペアリングを楽しめる店舗」といったものです。
下図を参考に、キーワードで並べておくといいでしょう。

図表1:事業内容の考え方

②自社の情報
自社の情報を、数値と文章でまとめます。大まかな項目は、下表のとおりです。詳細を書きたくなりますが、読み手(伝える相手)を考えると手短にポイントを記載するほうが伝わります。

図表2:自社情報の整理項目

③現状の把握など
会社のビジョンや目標、ターゲット顧客、取扱商品サービス、プロモーション、取引先&取引関係、従業員情報なども同じ要領でまとめていきます。以下に具体的な記述内容を示しています。

【ビジョン・目標】
ビジョン・目標は、会社がどこに向かって進んで行くのか、実現したい将来像について記述します。定性的な目標(対外的な評価、組織体制など)と定量的な情報(売上規模など)の両方を含めるようにしましょう。

※“基本理念”と混同されることがありますが、基本理念は会社が何のために存在するのかといった思想的な概念を示すものです。一方、ビジョンは理念をもとに作られた将来の“あるべき姿”を具体化して表現するものです。

【ターゲット】
ターゲットは同質性をもつ顧客の集団で、年齢や性別、生活スタイルなどの属性で区分けした大きな市場の中でも特に自社が狙っている集団を記述します。

【取扱商品サービス】
取扱商品サービスについて、自社で取り扱っている商品をメニュー表や売上実績を元に書きます。相手が理解しやすい商品名に加えて、自社の創意工夫や特徴的なポイントを加えることで興味を引くことができます。こだわりの食材をつかったスイーツなどを書くなら産地や調達場所などひと手間かけているポイントを添えるといいですね。

【プロモーション】
プロモーションには、ターゲットが顧客になってもらう方法を書きます。融資などを引き出すためには、顧客獲得の筋道を記述し、売上目標の達成ができる方法を説明していきます。

【取引先と取引関係】
取引先と取引関係は、主要な取引先とモノ・サービス・カネの動きを書きます。俯瞰図などで図式化すると全体像が伝わりやすいので参考にしてください。

図表3:取引先と取引関係の記載例

【従業員情報】
従業員情報には、従業員人数やアルバイト人数を書きます。これに加えてどんな業務についているかなども併せるといいでしょう。

3.経営戦略の立て方

(1)戦略の類型
経営戦略は、ビジョン達成に向けた基本方針です。外部環境と内部環境を考慮し、目標に向かってどのように進めていくかを決めるものです。一般的な戦略パターンとしては、以下のようなものがあります。

図表4:経営戦略の一般的なパターン

①コストリーダーシップ戦略
低コストで商品やサービスを提供することに重点を置く戦略です。リーダー企業が選択する戦略で、効率化や生産性向上などにより、競合他社よりも低価格で提供することで市場での競争力を確立します。

②差別化戦略
独自性や付加価値を持った商品やサービスを提供することに重点を置く戦略です。2番手の企業が選択する戦略で、品質やデザイン、ブランドイメージなどを差別化の要素として活かし、顧客のニーズに特化した魅力的な提案を行います。

③コスト集中戦略
特定の市場セグメントや地域において、低コストで提供することに重点を置く戦略です。限られた市場領域でのコストリーダーシップを追求し、競合他社との差別化を図ります。

④差別化集中戦略
特定の市場セグメントや地域において、独自性や付加価値を持った商品やサービスを提供することに重点を置く戦略です。限られた市場領域での差別化を追求し、競合他社との価値の差を打ち出します。

中小企業においては、経営資源を集中させ、独自性や差別化の要素を活かせる領域での事業展開が求められます。その為、差別化集中戦略がとられます。ただし、自社の強みや市場の需要を踏まえながら、どの戦略パターンを選択するかを慎重に検討しましょう。

(2)戦略実行上の課題と対策
戦略実行にあたって経営課題とその対策を考えていきます。戦略実行のために、何が必要なのか深堀りします。経営戦略として、10%の売上目標の達成を掲げても、頑張るだけの目標とせずそのために何が必要になるのかを考え、WEB活用やIT化による業務プロセス改善、人員不足の解消など多面的に考えましょう。
経営課題の抽出は、同じようなテーマに偏らないように4つの視点(①売上・財務・資金に関すること、②顧客に関すること、③業務プロセスに関すること、④組織・人材に関すること)で検討すると良いでしょう。

(3)戦略実行上の目標数値の見積
戦略実行による目標数値を決めます。目標数値は上記(2)で実施する対策の結果、会社に与える影響面を数値で考えて予測するものです。売上アップの課題がHPをうまく活用できていないことだとすると、HP活用により売上はあがりますが、HPの修正など費用が発生します。
目標数値を立てる際には、過去の数値実績、経営資源、他社の状況なども考慮し、実現可能な数値目標になるよう検討をかさねます。

4.経営計画の立て方

経営計画は、目標達成の為に具体的な取り組みをまとめた計画です。主に、収支計画、行動計画、資金計画で構成されます。収支計画は、戦略を実行することで実現させる収益・費用・利益を表す計画が記載されます。売上高、売上原価、販管費、営業利益、経常利益の計画値を年度別に立てるのが一般的です。
行動計画は、経営課題に対する対策を行動レベルまで具体的に落とし込み、担当者、期間、期限などを設定した計画で、担当者などを割り当てていきます。
また資金計画では、経営計画実施に資金不足に陥らないように資金の動きを計画に落とし込みます。

5.事業計画の活用方法

事業計画を作ることによって、事業進捗の確認と従業員それぞれのタスクが明確になってきます。定期的にモニタリングすること、また目標達成に向けて計画を共有することで組織的な活動に変えていくことが可能となります。

事業計画は、ボリュームも多くなりますが、まずは手短なフォーマットを見つけて、目的に応じてアレンジしてください。また計画するだけでなく、PDCAを回していくことで目標に近づきます。大阪産業創造館の経営相談室では、計画の立案、実行中の課題などの相談も行っていますので、お気軽にご相談ください。

※図表1~図表4は大西自作による。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

大西 森(おおにし しげる)氏

大西 森(おおにし しげる)氏

中小企業診断士
大阪産業創造館 スタッフコンサルタント

一般企業でシステム企画や経営企画等に従事。
管理系業務のITを活用した業務改善などを担当する。
その後、商工会議所では、事業計画づくりをとおして、サービス業、製造業、運輸業、建設業などの課題解決や業績回復の支援を行う。
2020年2月より現職。

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