第33回 DXの基本と進め方|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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経営事典

2022.8.9公開

DXの基本と進め方

2018年9月に経済産業省がDXレポートを公開した後、2019年が日本のDX元年と言われて早3年が経過しました。この間、新型コロナウイルスやIT技術の進化等により経営環境が大きく変化しており、環境変化への対応や厳しい競争に対応するため、DXへの取り組みの必要性が高まっています。今回から2回にわたり、DXの基本~DXを実現する3ステップ、DXに取り組んでいる企業の事例をご紹介していきます。

DXとは?

DX:Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)は2004年にスウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルダーマンによって「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と提唱されたのが始まりです。
日本では2018年に経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン」によって「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。具体的な手段や方法、必要性が明確にされておらず、「なぜDXに取り組む必要があるのか?」「IT化・デジタル化と何が違うのか?」「何から取り組んでいけば良いのか?」といった疑問を持たれる方が多いのではないでしょうか。まずはこの疑問点を解消していきたいと思います。

なぜDXに取り組む必要があるのか?
DXの必要性が高まっている理由として大きく4つ挙げられます。

① 働き方の変化
新型コロナウイルスの影響によりテレワークなど働き方が大きく変化し、これまでの業務フローでは業務の遂行に支障をきたす場面が増加しています。また、インターネットを活用したオンラインでの商談や打合せが当たり前になりつつあり、顧客マインドも変化するなど、時代に合わせた業務プロセスの見直しが必要です。

② 生産性の低さ
日本の労働生産性は海外と比較して低い状態が続いており、今後の成長と発展には生産性向上が重要となっています。そのためには生産性の低い業務はITシステムによる自動化やロボットなどを代用し、付加価値の高い業務に経営資源(ヒト)を集中させることが必要です。

③ 生産年齢人口の減少
人口減少に伴い、働き手となる生産年齢人口も減少し続けており、現状でも採用に苦戦する中小企業が増加する中で今後ますます採用が難しくなる可能性があることから、人に依存せず業務を遂行する仕組みを構築することが必要です。

④ SMAC
SMAC(Social、Mobile、Analytics、Cloud)と言われるテクノロジーが、進化・普及したことで、多くの人がスマホ・タブレット端末などのモバイルを通じて、買い物や検索、SNSなどのソーシャルサービスを利用した情報発信やコミュニケーション手段に活用しています。これらの膨大なデータをクラウドに保存し、分析することで、市場の変化・新しい価値を発見し、マーケティングに活かすことが可能となりました。

これらの背景に加え、AIやIoT、AR、VR、5Gの登場により、企業はビジネスモデルの見直しや競争力を高めるための技術革新に取り組む必要性が高まっています。

IT化とDXは何が違うのか?

混同されやすいキーワードとして「IT化・デジタル化」が挙げられ、「DX」とは目的が大きく異なります。
「IT化・デジタル化」の目的は、ITシステムやツールを活用することによって業務の負荷軽減や効率性を高めることで生産性をアップさせることです。具体的には、請求書など帳票書類のペーパーレス化やZoomなどを用いたオンライン会議やオンライン商談の実施などが挙げられます。
一方「DX」の目的は、先にも記載した通り、ビジネスモデルそのものを変革したり、生み出したりすることで、人々に新たな価値を提供して、競争優位性を確立し、企業の競争力をアップさせることが可能です。身近な具体例として、飲食店で導入が進んでいるモバイルオーダーが挙げられます。企業側のモバイルオーダーのメリットとして、レジ注文の機会が減少するため、従来であればレジ業務を担当していた人員を「調理」に集中させることが可能となります。また、注文データを分析することで顧客の購入商品に合わせたキャンペーンの効果的な配信や、他にはレジの混雑緩和、人員の適正配置などコロナ禍における顧客への新しい価値提供として機能し、従業員の負担を軽減するなど様々な競争優位性を確立することに繋がります。

DXの進め方

DXの必要性やIT化・デジタル化との違いがわかったところで、次にDXを実現していく3ステップについて確認していきましょう。

DXを実現していく3ステップ

① デジタイゼーション:アナログデータのデジタル化
これまでアナログで取り組んでいたことをデジタル化していくフェーズです。先に挙げた紙の帳票のデジタル化やFAXでの注文から受注専用システムによる注文対応への変更などが挙げられ、各業務の効率化を重視した部分最適なイメージだといえます。

② デジタライゼーション:ビジネスプロセスのデジタル化
部分最適のデジタル化であったデジタイゼーションを進めて、全体最適化によるさらなる効率化とデータの蓄積を図ることがデジタライゼーションのフェーズです。帳票データや売上データを会計システムと連携させて管理したり、受注システムと作業工程管理システムを連携させてタスクの割り当てから納期期日の見える化を図る、などがあたります。

③ DX(デジタルトランスフォーメーション):新しい価値の創出(競争優位の確立)
デジタライゼーションで収集されたデータを分析することで、予測を立てて精度の高い販売計画の立案や人員の最適配置、新たな顧客ニーズの仮説検証などマーケティング活動に活かすことで競争力を高めることが可能となります。

いきなりDXを実現することはハードルが高いのでまずはアナログからデジタル化のフェーズであるデジタイゼーションを中心に効率化を目的とし、IT人材のスキルアップ、社内のIT化推進を進めていくことが最初の一歩になります。

(2022年8月9日掲載)

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

中野 雅公 氏

中野 雅公 氏

 

中小企業診断士
グラスハパコンサルティング株式会社 代表取締役社長
デジタルとアナログを活用した集客・販売促進の専門家。中野IT活用診断士事務所代表。忙しい事業者様の手間暇をかけずに導入できる仕組み作りで、お客様の集客・リピーター作りを実現するための集客支援、販売促進を専門としている。

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