第48回 マーケティングで気を付けたい、広告表現を規制する法律とは②|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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2023.10.24公開

マーケティングで気を付けたい、広告表現を規制する法律とは②

前回は広告表現を規制する法律のうち代表的な二つ、薬機法と景品表示法(景表法)について説明をしました。今回は景品表示法において、行政処分を避けるための根拠資料の扱いや、不当表示を未然に防ぐための措置など、具体的な対応の考え方について解説します。

不実証広告と行政処分

前回は景表法が禁止する表示について解説しましたが、監督官庁である消費者庁(長官)が優良誤認表示の禁止に違反するかどうかを判断する際のものとして、不実証広告規制という制度が存在することを事業者としては理解しておく必要があります。

これは、消費者庁が違反の有無を判断するに際して、事業者に対して期間を定めて、表示の裏付けとなる「合理的な根拠を示す資料」の提出を求めることができ、事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(景表法7条2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されるというものです(8条3項)。

つまり、商品の効果として本当に表示内容通りの効果が実際にあったとしても、広告表示を行った事業者の側にてその効果を裏付けるための合理的な根拠資料の提出を消費者庁に行うことができなければ、措置命令(日刊新聞による告知や再発防止策の実施、同様の行為を繰り返さないようにする命令であり、社名公表もあります。)や課徴金納付命令(表示期間のうち3年を上限として遡り、商品等の売上額の3%を納付するように命令するもの)という行政処分を受けてしまうというものです。

そのため、実際にそのような効果があるものであっても、広告でアピールするのであれば、効果を客観的に裏付ける試験結果やデータ等について事業者において保管する必要があるのです。また、このような根拠資料の提出期限については、原則として「15日以内」に提出するように定められますが、提出を求められた後に根拠資料を一から準備することはおよそ不可能です。実際の運用においては、このような期限を定めた提出要求の前段階において、消費者庁から調査のための問い合わせが入ることが多く、その際に根拠資料を提出する機会がありますが、それでも対応できる時間は限られており、調査が入った後に一から準備をすることは困難を極めます。そのため、広告の内容を検討する段階において、裏付けのための合理的な根拠資料を準備しておくことが必要なのです。
どのようなものが「合理的な根拠」と言えるのか否かについては、「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針―不実証広告規制に関する指針―」(一部改正 平成28年4月1日消費者庁)をご参照ください。

なお、前回において「著しく優良」や「著しく有利」であるかのように誤認される表記が禁止されるものとお伝えしましたが、単に「優良」「有利」でなく、不当表示となるのは「著しく」と言えるものに限定されています。これは、広告の使命として、商品等を魅力的に伝えなければならないことから、多少の誇張はやむを得ないのではないかという配慮の表れとも言えます。そのため、事業者の立場からは、多少の誇張を敢えて行った上で魅力的な表現をしたいとの考え方も出てきそうです。

もっとも、裏付けとなる根拠資料から見て、表示と根拠がどこまで離れてしまえば「著しく」に該当するのかについては、広告全体の表記との関係も考慮する必要がありますし、その時代の風潮や消費者庁の考え方にも大いに影響されてしまうことは否定できません。そのため、「著しく」に該当するか否かのギリギリを攻める表現を行うことはお勧めできません。

事業者として必ず行うべき管理上の措置とは

景品表示法においては、広告を行う全ての事業者に対して、不当表示を未然に防ぐための体制の整備その他の措置を講じる法的義務を定めています(景表法26条1項)。具体的にどのような措置を行うべきかについては、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(改正 令和4年 6月29日内閣府告示第74号)をご参照頂ければと思いますが、当該措置を設けるべきことが法的に義務付けられていることすらも認識していない事業者が未だ多いのが実情です。

仮にこのような措置を講じていない場合、上記の措置命令の判断に際して重視されてしまうことが多く(不当表示に該当するということだけでなく、当該措置を取っていないことについても措置命令の中で指摘されるケースが多いです。)、また、課徴金納付命令を受けないための「相当の注意」を払っているかどうかは、当該措置を設けているかや、それが実際に機能しているかが非常に重視されますので、いざという時に納付命令を避けるためにも、事業者としては手間を惜しまずに整備を進めるべきであることは間違いありません。

まずは、上記の指針のうち、表示等を管理するための担当者(表示等管理担当者)を定めることから始めて頂き、その担当者を中心として、法令遵守の方針の明確化や周知、根拠資料の準備や管理、不当表示が生じた場合の対応準備を行うことを進めて頂ければと思います。

おわりに(ルールを守りながら魅力的な言葉選びを)

以上、マーケティングにおいて気を付けるべき広告表現に関する規制をお伝えさせて頂きました。違反と判断された場合の事業へのインパクトは非常に大きく、コンプライアンス上も大きな問題が生じてしまいます。それを避けるためにも、表示等管理担当者を中心として社内制度としての整備を行った上で、広告に携わる全ての担当者がルールを守りながら魅力的な言葉選びができる技術を身につけて頂ければと思います。そして、違反しそうな表現を敢えて用いてリスクを取るのではなく、訴求力としては変わらずリスクの低い別の表現がないかを常に意識・検討することによって、リスクを避けつつ最大限のマーケティング効果が得られるような広告を作って頂ければと思います。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

濱永 健太(はまなが けんた)氏

濱永 健太(はまなが けんた)氏

弁護士法人飛翔法律事務所 弁護士

2004年岡山大学法学部卒業、2008年立命館大学法務研究科法曹養成専攻修了、2009年弁護士登録と共に現事務所に入所、2015年パートナーに就任。
広告やキャンペーンを規制する景品表示法・薬機法、BtoC取引に関する消費者契約法、ウェブサービスに関する特定商取引法、その他不動産、相続・事業承継を多く手掛ける。

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