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2021.02.22公開

『ビジネスモデル』③
~ビジネスモデルキャンバスの構成要素~

前回のコラムでは、ビジネスモデルをシンプルに表現し戦略立案に活用できるフレームワーク『ビジネスモデルキャンバス』の特徴や魅力をお伝えしました。
今回は『ビジネスモデルキャンバス』を構成している各要素の内容をより掘り下げてご紹介します。

『ビジネスモデルキャンバス』の構成要素

ビジネスモデルキャンバス

(図1 ビジネスモデルキャンバス)
データのダウンロードはコチラ

まずは『ビジネスモデルキャンバス』を構成している9つの要素を振り返って見てみましょう。

(1)顧客セグメント(CS:Customer Segments)
(2)価値提案(VP:Value Propositions)
(3)チャネル(CH:Channels)
(4)顧客との関係(CR:Customer Relationships)
(5)収益の流れ(RS:Revenue Streams)
(6)リソース(KR:Key Resources)
(7)主要活動(KA:Key Activities)
(8)パートナー(KP:Key Partners)
(9)コスト構造(CS:Cost Structure)

前回のコラムでも触れたように、(1)顧客セグメントと (2)価値提案がビジネスモデルの最も重要な要素になります。
その2つをつなぐのが、(3)チャネルと(4)顧客との関係で、顧客への価値の伝達領域、すなわちマーケティング領域となります。
一方、(2)価値提案をするために価値を創造する領域は、自社の内部の部分であり、(6)リソース・(7)主要活動・(8)パートナーから構成され、エンジニアリング領域ということになります。
それらのビジネスの結果として、(5)収益の流れと(9)コスト構造から、利益を生み出す構造となっているかをチェックし、ビジネスモデル全体を見直し改善していくことが重要です。

それでは、各要素を具体的に見ていきましょう。

各構成要素の内容と記述ポイント

(1)顧客セグメント(CS:Customer Segments)
自社の主要な顧客、自社がhappyにしたい人は誰か、という“顧客”を表すブロックです。
言い換えると、自社の提供する製品やサービスに、価値や魅力を感じる顧客とはどんな人たち(グループ)なのかをここに記述します。
性別や年齢、職業といった属性よりも、“こうしたい・こんなことを解決したい○○な人”というように、ニーズや消費行動、態度などを具体的に言い表した像を書き表します。
例えば、「30代・主婦」よりも、「調理の手間を省きたい主婦」の方が、自社が提供したい価値が明確になります。
複数の顧客層があれば、まずは複数挙げていきましょう。
表現例:
「忙しい社会人」「イキイキと毎日を過ごしたい高齢者」「コストダウンしたい中小企業」「販路開拓に困っているメーカー」など

(2)価値提案(VP:Value Propositions)
(1)で挙げた顧客に対し、価値を生み出す“自社の製品やサービスについて”を表現するブロックです。
ここでは、製品やサービスそのものを記述するのではなく、それらによって生み出される、“自社ならではの価値やベネフィット(便益)”を記述します。
わかりやすく言えば、「顧客が、なぜ競合他社の製品やサービスではなく、自社の製品やサービスを選ぶ(もっと強く言うと、選ばないといけない)のですか?」に答えるということです。
その理由が他社に対する優位性であり差別化となります。
これがないと顧客に選ばれません。
表現例:
「プロの味が自宅にいながら味わえる」「あらゆるものが買える」「操作が簡単」「デザインがいい」「価格が手ごろ」「コストが削減できる」など

(3)チャネル(CH:Channels)
顧客と“どのようにコミュニケーションし、どのように価値を届けるか”を表すブロックです。
自社の製品やサービスをどこで知ってもらい、どこで購入してもらうかを記述します。
言い換えれば、顧客とのタッチポイント(顧客と接する媒体や場所)のことです。
表現例:
「SNS」「ホームページ」「インターネット販売」「法人営業」「顧客からの紹介」など

(4)顧客との関係(CR:Customer Relationships)
顧客に対して“どのように関係を構築し、どのように進展させていくか”を表すブロックです。
平たく言うと、顧客とどのようにつながっていたいか、またはつながっていきたいか、ということです。
ここは、顧客との関係の「深さ」と「長さ」で考えていきます。
顧客との関係の「深さ」は、浅いか深いかで表します。
セルフサービスなら浅い関係、カウンセリングやコンサルティングは深い関係がイメージできます。
「長さ」に関しては、顧客とかかわる期間の長短で表します。
売り切りなら短期的関係、会員制やサブスクリプションサービスは長期的関係となります。
この2点を踏まえて、ビジネスの特性や進展させたい方向性によって、顧客とどんな種類の関係を結ぶのかを記述します。
コンビニエンスストアを例に挙げてみましょう。
一般的に利便性が提供価値のため、基本的にはセルフサービスという浅い関係となります。
しかし、最近では、ポイント会員制による囲い込みで顧客と長期的関係を図っています。
ビジネスの進展具合など、状況変化によってもこの要素は変わってきますので、見直すことも必要です。
表現例:
「セルフサービス」「カウンセリング」「コンサルティング」「囲い込み」「会員制」「サブスクリプションサービス」「共創関係」など

(5)収益の流れ(RS:Revenue Streams) 自社の提供する価値に対し、“どのように・どれくらいの対価を支払ってくれるのか”を表すブロックです。
自社から見れば、売上であり、収入の項目や課金方法を記述します。
表現例:
「商品代金」「メンテナンス料」「会費、使用料」「レンタル料」「広告料」「仲介手数料」「毎月定額の月額料」「定価販売」など

(6)リソース(KR:Key Resources)
自社が価値を生み出し提供するために“必要不可欠な経営資源”を表すブロックです。
これが存在しないと、価値創造や価値提供ができません。
固定資産や人材、資金などの有形資産だけでなく、ノウハウや経験・知識、システム、技術、知的財産といった無形資産も含まれます。
表現例:
「大規模工場」「一貫体制システム」「駅近の立地」「技術者でもある営業人材」「風通しのいい企業風土」「ブランド価値」「特許」など

(7)主要活動(KA:Key Activities)
自社が価値を生み出し提供するために行う“必要不可欠な活動”を表すブロックです。
製品やサービスを生み出す製造開発、顧客の課題解決、プラットフォーム構築など、ビジネスを推進していくための活動を表します。
表現例:
「多品種少量生産」「消費者が自宅でできない作業に特化」「定期的なアフターサービス」など

(8)パートナー(KP:Key Partners)
自社が、価値を生み出し提供するために、“自社だけではまかなえない主要活動やリソースを提供してくれるパートナー”を表すブロックです。
ビジネスは1社で行っているわけではありません。
外部組織との協力関係を構築することで、必要なリソースの確保、活動の最適化、リスクの低減などを実現できます。
どんなパートナーとパートナーシップを構築するのかを記述します。
表現例:
「商社」「物流会社」「販売代理店」など

(9)コスト構造(CS:Cost Structure)
ビジネスを運営するにあたり、“発生する必要なコスト”を表すブロックです。
価値創造や価値提供にかかるすべてのコストを記述します。
販売量に応じて変化する変動費と、変化しない固定費に分けて考え、損益分岐点を意識し、利益が生み出される構造かどうかを考えることが必要です。
表現例:
「人件費」「製造原価」「仕入れ」「地代家賃」「研究開発費」「広告費」など

ビジネスモデルキャンバス作成の進め方

ビジネスモデルキャンバスは、9つの構成要素について付箋に書き出し、貼付して作成していきます。
どのブロックから作成しても問題ありません。
自分が作成しやすいところから進めてください。
お勧めは、ビジネスが具体化している方は顧客セグメントから、ビジネスが明確になっていない方はリソースから始めると作成しやすくなります。
付箋を使う理由は、貼替がきくことです。
1枚の付箋に1要素(シンプルかつ端的な言葉)を記載し、貼付していきます。
1要素は、表現例で挙げている各項目(「忙しい社会人」、「人件費」など)をイメージしてください。
文章でつらつら書いてしまうと、修正時にすべて書き直しが必要になり、手間取ることになります。
1つのブロックに貼付する枚数は特に制限はありません。

まずは、短時間(5~10分程度)でざっと作成してみましょう。
インスピレーションで浮かんだものを書くことにつながります。
インスピレーションで出てきたキーワードは、意識的に顕在化しているものなので、まずはそれを大切にします。
書けないところは、無理に書かなくても大丈夫です。
その後、ブロックごとに見直し、思いつく項目はすべて書き出していきます。(思考の拡散)
今度は、その中から、必要でないもの・優先順位の低いものを省き、集約していきます。

ビジネスモデルキャンバスは、1つ作ったら終わりではなく、いろいろなアイデアやパターンごとにいくつも作成し、その中から一番いいものを見出してください。
手早く作成できるので、仮説と検証を繰り返すのに最適なツールです。

今回は『ビジネスモデルキャンバス』を構成している各要素の内容説明をしました。
次回は、『ビジネスモデルキャンバス』の作成例をあげて、考え方や作り方のポイントを解説します。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

大西 眞由美(おおにし まゆみ)氏

大西 眞由美(おおにし まゆみ)氏

 

有限会社グランレーヴ 代表取締役
中小企業診断士
大阪産業創造館 経営相談室 経営サポーター

日用品メーカー、製薬メーカーのマーケティング部門において、商品企画開発や商品育成を約15年間担当する。
独立後は、その経験や中小企業診断士の資格を活かし、製造業・小売業・サービス業を中心に、ビジネスモデルデザイン・事業戦略策定、新製品・新規事業開発等の支援を通じて、「未来の持続可能な成長をめざす"経営づくり"」をサポートしている。

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